最近のトラックバック

2019年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

Foreign Affairs

  • CFR: フォーリンアフェアーズ英語版

« 演技の研究 | トップページ | 競馬の賭け方 »

2015年10月25日 (日)

フォーリンアフェアーズ英語版(情報は古いけど地政学が分かります)

接近するリヤドとアンカラ
サウジアラビアのリヤドは、もともとトルコのアンカラとは友好関係にはなかった。
しかし、2003年にイラクがアメリカに侵略され、イラクでシーア派が力をもってしまった。
イラン・シリア・ヒズボラのシーア派ラインをもつイランのテヘランとライバル関係にあるリヤドは、ソフトなバランスをこの地域に求めるために、非アラブ国であるアンカラとの接近を始めた。人的交流を始め、いろいろな試みがなされた。
アンカラとしてもイラクは問題だった。イラクのクルド人の分離独立運動を怖れていたのだ。
イラクでクルド人が独立すれば、トルコのクルド人もこれに応じてしまうために国が割れる。そこに目をつけたリヤドがアンカラとの共通利益を見出して接近したのだ。
リヤドは、アンカラがテヘランとリヤドの両方を見ることは望んでいなかった。
そのために、イラクのクルド人問題を持ち出してリヤドに引き寄せたのだ。
また、石油の供給もアンカラが望んでいたことも巧妙に利用した。
そうやって、スンニ派枢軸に非アラブ国であるトルコをサウジアラビアが呼び込んだのだ。

フランソワ・オランド~フランス大統領
オランドがフランスの大統領になった。このことの意味は、第五共和制下では二人目の社会党からの大統領だということだ。
ミッテラン大統領は、議会の多数派を握れずに「コアビタシオン」と呼ばれるねじれを抱えながらの任期を余儀なくされた。
しかし、オランドは社会党の幹事長を長く経験し、非常に穏健な思想を身に着けていた。
移民を含めてフランスの再統合を目指し、支持を集めた。
左派はことごとく地方選挙で勝っていたのだ。
今年の7月にフランスは議会選挙を迎える。
オランドがミッテランのようなコアビタシオンを経験するのか、それとも議会の多数派も握るのかの第二ラウンドを迎えることになる。

中国の次世代リーダーを待っているもの
30年前に鄧小平が中国経済の改革開放を進めた時には、経済の自由化と同時に、政治も民主化に進むと思われていた。当時の中国の人口は今の三分の一だった。やがて、中国経済は90年代に入り発展し、人口は三分の二になった。人口は海岸地域に流入したのだ。
中国の問題がやがて明らかになった。「経済格差」「土地が足りない」「労働環境の悪さへの不満」の三つだ。
中国は、経済発展とともに「土地が足りない」という問題に直面したのだ。これは「領土的野心」とつながると考えていいだろう。しかし、中国の政治体制の動きは鈍い。
地方の貧困層が、都市に流れ込んで、労働環境は悪いけど「地方にいるよりはマシ」と考える連中に政治的不満がたまっている。
さらに、地方で暴動が起きると地域のリーダーは獄死したりする。それを重く見ているのはむしろ国家の中枢だった。地方の改革を中国政府は頭に入れている。しかし、地方政府の連中は「まだまだやるべきことがある」と中枢への不満を隠さない。中国は国家レベルで確実に分権化に向かっているのだ。
中国はGDPは飛躍的に伸び、GDP比での国家財政もあまり変わらないため、国家の財政は豊かである。彼らの税収は消費税に依存している。また、国営企業の収入にも依存しているのだ。しかし、財政が豊かになっても社会保障や医療などに支出は向かっていない。インフラ重視の支出に対して、労働者の不満は大きい。
中国人民の「経済的満足度」は世界の24位に入るに至っている。しかし、経済格差はもはや容認できない水準に到達していることと、土地が足りないことなど、内政面での課題は多い。
それをよく理解したうえで日本も中国という国を見ていかなければならないだろう。

アフガニスタン~アヘンの花嫁
アフガニスタンでは、農業の20%がアヘンを栽培しているのだ。そして、その3分の2がヘロインに精錬されている。世界レベルでは650億ドル規模のビジネスであるが、アフガニスタンは40億ドルをアヘン栽培で得ている。実は、アフガニスタンのアヘンやヘロインは、イランに密輸されてヨーロッパへとつながっているのだ。この密輸の際に、リスクがあり、逮捕されたら全財産を失う人がいる。リスクのある仕事で財産を失った人は「娘を売るしかない」のだ。アフガニスタンでは、娘は数千ドルで売れる。通常の奴隷なら70ドルだ。彼らの国では何十歳も上の男と若い娘が結婚するのだ。それが男の名誉とされている。スンニ派では16歳未満の結婚は禁止されているが、シーア派ではそういう規制はない。
そのようなことから「アヘンの花嫁」が人身売買されているのだ。この実態を、アメリカが映画として公開した。タリバンは国際世論に配慮して、アヘンの規制を表向きは表明したことがあるが、彼らの資金源を放棄するわけがなかった。
今後、アフガニスタンの地でアヘンを撲滅するには数十年かかるだろうと言われている。
アフガニスタンで良識がまかり通るという状況ではないのが現状なのだ。

アメリカが宇宙計画の継続を表明
国家のプロジェクトとして知られるのが、万里の長城であったり、ピラミッドであったり、秦の始皇帝の墓であったりするが、これらは「王朝への敬意」「利益の追求」「軍事目的」の三つの理由があって発動されるのが通常だ。
アメリカも「宇宙計画」がこれらのメリットにつながると考えて、オバマは宇宙計画の継続を表明している。場合によっては一兆ドルもの費用が必要だとされるが、アメリカのメリットになるという判断だろう。

アフリカの子供たち
全米で「コニー2012」というフィルムが公開され、ウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍」のコニー一派が、数万人の子供たちを誘拐し、兵士にしたり、配送人にしたり、料理人にされたりと、都合のいいように利用していることが明らかにされ、アメリカで関心が高まった。彼らは時に虐待され、搾取され、レイプされているのだ。他にも、アフリカではソマリアが飢饉を起こして、2月に終息したが、子供たちがリスクにさらされている。また、コンゴでも子供のレイプは問題になっている。世界で最も新しい国である南スーダンも体制が不安定であることから、子供たちの問題がある。
「アフリカの子供たち」というテーマを論じる場合には、具体的にはこれらの国を指摘しなければならないのだ。

中国と南シナ海
中国が、南シナ海で6か国を相手に攻撃的な姿勢をとっていたことが知られていたが、最近は、ベトナム漁船などの拿捕と近海の島での拘束などを行わないなど、非常に態度を軟化させたと言われる。
アメリカによると、2010年ごろからこの兆候が見られたとされる。
ASEANなどでも鄧小平の定めたコードを重視し、石油資源の配分などの話し合いに応じる姿勢を見せている。
「中国は南シナ海でのUゾーンで攻撃的」という論調は急激に変化を見せたのだ。

フランス~反グローバリズムの現状
フランスは、自国の文化にプライドをもち、ハリウッドを標的にグローバリズムを批判してきた。しかし、今や、グローバリズムをアメリカナイズと同じと考える人は少ない。
むしろ、中国の影響力を強めるのがグローバリズムだと考えるようになっている。さらには、BRICsの影響力も強める。
フランス経済そのものがグローバリズムの恩恵を受けていて、世界の企業のベスト500にもっとも多く名を連ねているのはフランスなのだ。
銀座にルイヴィトンやカルティエ、ルオシタンなどが当たり前のように店舗を連ねているのにグローバリズムに反対を唱える矛盾を悟っているのだ。

王座のゲームと現代社会
英国で「王座のゲーム」という映画がリリースされた。現代のネット社会は「これらのエキサイティングな要素をすべての庶民が手にした」と言われる。
しかし、現代の庶民は「あの作品ほど今は楽しくない」というのだ。
中世の英国では「人々は退屈だった」とされる。退屈ではあったが、つらくはなかったし不幸でもなかった。
中世と現代ではどちらがエキサイティングで、どちらが幸せだったのかが議論になったのだ。昔の人の楽しみは教会のイベントぐらいだった。
そういう時代をドラマティックに描いて「どちらが幸せだったのか」という論争を引き起こしたのがこの作品だった。
"A Song of Ice and Fire"
http://www.youtube.com/watch?v=pujE8i90U4Q

オバマとブッシュの神
ブッシュ(子)とオバマは、ともに信仰心にあつい人物である。
ブッシュは、テロ社会の到来の中で「コミュニティーを信頼して神の導きを待つしかない」と
言ったし、オバマは北京で「考えや崇拝を表現する社会」の重要性を主張した。オバマは北京でのスピーチでノーベル平和賞を受賞したのであり、カイロでのスピーチはそのあとに続くものであるという位置づけだ。
しかし、ブッシュは「アメリカの特殊な立場」を強調した。これがイラクやアフガンで反発を買ったことは知らないといけない。
オバマはそのような意味で、ブッシュの教訓を学習し、ウガンダの混乱や貧困に宗教を押し付けずに支持を広げている。
もともと、アメリカは侵略国家に宗教を押し付けて混乱を招いてきた歴史がある。マッキンリー大統領は1899年にフィリピンを支配したが、キリスト教の布教をしたために内戦が続いたのだ。
過去のデータから学習するのがアメリカだった。
オバマもブッシュも、大統領でありながら、「宗教界のボス」的な立場に立っているのだ。
権力者の現実がここにある。

王座のゲーム
HBOで放送された番組が、非常に人気がある。
政治社会のリアリズムを描いているとされ、国家の安定よりも短期的利益を追求する権力者を描写しているのだ。それでありながら、倫理がときには要求されることも明らかにしている。「権力はルールに勝る」という現実を踏まえながらも、ルールを守らない権力者が処刑されたりする。
国家の安定とはルールであり、短期的利益を求め合うのが権力者たちなのだ。
権力者はエリートであるが、エリートの競争を、売春婦や乞食などの目線から見物する視点が面白いとされる。

匿名性が有効な場面
アメリカでは1970年代の反戦運動から匿名性が有効に使われてきた。基本的に「不満の意思表示」には非常に有効に機能する。それが今ではネット社会に持ち込まれているのだ。
しかし、有意義な思想の発信源になろうとする者は、発信源を明らかにしてお金をもらう
知的財産コミュニティーに属することになる。「匿名性」というのは「不満の意思表示」に有効に機能するだけだということを知らないといけない。


「ヨーロッパの1848年と、アラブの2011年」 民衆は抑圧的な体制を打倒し、自由や平等を志向しても、破壊のあとに何が待っているかは分からないものだ。ヨーロッパではナポレオンがヨーロッパを征服し「能力のある奴は官吏に登用する」という発想を広めた。ナポレオンが退場した後に、ふたたびヨーロッパは抑圧的な体制に戻った。1840年代にヨーロッパ経済が停滞したため、民衆は再び動き始めた。「1848年」の登場だ。この時民衆はフランス革命を思い出していた。ナポレオンの甥がナポレオン三世として抜群の知名度を誇り、選挙でフランス共和国の大統領に選ばれた。また、オーストリア帝国ではメッテルニヒが民衆の蜂起に遭いその地位を失っている。プロイセンでこれを見ていたのがビスマルクだった。彼は「民衆の支持のない国王はもはやいかなる国も統治できない」と考えたのだ。また、治安の維持を路地裏まで保証しないと権力は維持できないと痛感したのだ。統治が民衆の利益にならないのならもはや体制は保証されないということを学習した。1850年以降ヨーロッパは経済が発展した。これがビスマルクを権力者の地位にまで高めている。民衆が革命で志向する「自由」「平等」をどのように具体的に画を描くかは、いろんな事例を学習しなければわからないし、今のアラブの指導者は「ヨーロッパの1848年のデータ」の学習すら求められている。それが国家統治の技術となるのだ。 フォーリンアフェアーズ「1848年と2011年」

「アメリカがイランを攻撃する可能性」 アメリカがイランの核保有をどれだけ深刻に受け止めているかが明らかになっている。イランが核をもてば、国力は明らかに充実する。さらに、ライバル国家であるサウジアラビアもパキスタンの支援を得て核保有に踏み切るのは明らかだとされる。このことから、アメリカがイランの核施設を攻撃する可能性が浮上した。軍事的には「失敗する可能性が強い」とも言われ、世界経済へのダメージも生じる。しかし、もし成功するのならアメリカの世界戦略の見通しはきわめてよくなるのだ。 フォーリンアフェアーズ「イラン攻撃の時」

「TPP~フォーリンアフェアーズの分析」 TPPは、現在、オーストラリア・ブルネイ・チリ・マレーシア・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・アメリカ合衆国・ベトナムで話し合われている。このメンバーで「10年以内の関税ゼロ」などが話し合われ、知的財産の問題や、国営のビジネスをどう組み込んでいくか、投資の問題を詰めている段階だ。しかし、これらのメンバーの最大の関心事が「日本はどう動くのか」という問題だ。このメンバーを見ればわかるように、「アメリカ以外は大したメンバーではない」ということだ。これに日本が入ればTPPの貿易の規模は3倍にも4倍にもなる。アメリカはこのため、韓国とFTAを締結した。日本に「ハイテク製品を日本ではなく韓国に求める」という圧力を加えたのだ。「日本の農産物へも配慮する」というメッセージも伝えられている。アメリカはすでに、アジア諸国の貿易圏が巨大化するのを見越しており、中国も「中国こそが巨大な国であり、他の国は小さい。それだけの話だ」と語っている。日本は、中国・韓国をにらみながらも、TPPに日本を高く売りつけるタイミングを見ているのだ。 フォーリンアフェアーズ「TPPと中国の膨張」

「エイズから解放された世代へ」 エイズに関する国際社会の取り組みのポイントは、死亡者数よりも新たな感染者数を低い数字にする、ということに尽きる。ところが、2010年に、エイズによる死亡者は180万人であるのに対して、新たな感染者は270万人だった。今までののエイズ研究は、どのように治療するかという点に多額の資金が投入されていた。しかし、感染者数は増え続けているのが現状で、もし、死亡者数よりも新たな感染者数が低い数字になれば、やがてはエイズから自由になれる世代が来ることを統計的には意味する。そのため、死亡者数>新たな感染者数という時代が来たら、エイズ政策が国際社会においても個人レベルにおいても一大転換点を迎えるとされる。今はこの数字に注目することが必要なのだ。 フォーリンアフェアーズ「エイズから解放された世代へ」

「なぜケニアはソマリアに侵攻したのか」 ソマリアで飢饉が起き、ケニアが2千名の兵を送り込んだ。ケニアの兵はよく訓練されており、有力な政治家とのつながりが軍人にあるとされる。しかし、ケニアはアフリカでは「平和の孤島」であり、ソマリアが犯罪の温床になってしまうことから兵を送ったのだ。コンゴやウガンダのように「軍が主導する」国家ではないが、政治もあまり信頼されていないのがケニアの特徴だとされる。

「ソマリアの飢饉」 アフリカでここ60年で最悪の干ばつが襲ったが、ソマリアでの飢饉は政治システムの機能不全から由来する人災だとも言われ、放っておけば750万人が死亡するとされた。アメリカは、この国が周辺国に助けを求めたことをむしろチャンスと考えたのだ。テロの温床であるこの国を改革するためには「助ける」という作業が必要になる。そのために、アメリカはこの飢饉を機に、ソマリアの体制が好ましいものになることを望んでいるのだ。

「ユーロの失敗」 1999年に立ちあがったヨーロッパの通貨統合「ユーロ」は10年と少し経過時点で失敗が明らかになった。あまりにも広大な地域を包摂したことが理由であり、財政赤字だけでなく、いろんな国が貿易赤字の問題を抱えた。さらに、フランスやドイツのような豊かな国が、ギリシャやイタリアに対して独裁的にふるまうようになったのだ。これらの原点は、スエズ動乱の際に、西ドイツの首相アデナウアーが「もはや我々はアメリカには勝てないが、ヨーロッパが一つになるという道が生まれた」といったことに起源をもつ。政治的な動機はいまだ失われていない。EUはあくまでも政治目的であり、通貨統合の失敗はただちにはEUの失敗を意味しないと言える。 フォーリンアフェアーズ「ユーロの失敗」

「通貨の崩壊」 世界各国の外貨準備高の9割をドルとユーロが占め、外国為替市場の7割を占めている。しかし、ユーロの失敗は周知であろうし、ドルも昨年夏に、アメリカ国債の償還が政府の政策で簡単に左右されてしまうことが明らかになった。このことから、ロシアのプーチンは「アメリカは、ドルの世界独占と経済のグローバル化に寄生している」と表現している。 フォーリンアフェアーズ「通貨の崩壊」

「経済格差は経済にどのようにダメージを与えるか」 19世紀の社会主義思想を洗練させたのはまさに「経済格差」の存在だった。現在においては、経済格差は「財政赤字」「経済成長の鈍化」をもたらすことが指摘されている。経済格差による財政赤字というのは、金持ちが貯蓄に回る一方で、貧困層が借金と消費を行うことから、クレジット不安が起きることがあり、財政出動が必要になるという構図だ。また、経済格差による経済成長の鈍化というのは統計的にデータがとれており、「経済の健康度」が悪化した時に経済成長は鈍る効果があるようだ。だが、これらの明確な効果は認められるものの、「格差是正」を政治の側が政策として明確にしていいとは限らない。人間がエネルギーを使うためには動機があり、その動機によって経済格差がもたらされているのなら、その自然な人間活動を抑制するべきではない。しかし、貧しい人々にチャンスを与え続けるという発想は忘れてはならない。 フォーリンアフェアーズ「経済格差は経済にどのようにダメージを与えるか」

「シリアの今だ止まらぬ暴動」 春に起きたアラブの暴動が、シリアでは年を越してしまったのだ。死者はすでに6千名を超えた。フランスは「人道的回廊」という名の支援物資を送ったし、国境を接するトルコはシリア北部に「セーフゾーン」と呼ばれる緩衝地帯を設定した。国連も医療などの支援を行っている。アメリカはこれらへの介入を検討している段階だ。問題は、反体制側が部族対立などで一枚岩ではないことだ。シリア国民評議会(SNC)が何らかの統一を果たして、周辺国の承認を得ることが求められるが、それは容易なことではない。アサド大統領は、アメリカも「すでに死に体である」と言っており、現在のシリアは間違いなく体制移行期に位置すると言っていい。 フォーリンアフェアーズ「シリアのいまだ止まらぬ暴動」

「シリア~中東におけるロシア最後の友人」 ロシアは今のアサド大統領の父が冷戦時代にロシア側に属したことから友人関係が始まっている。しかし、現在は、武器の売却などの経済の取引においては「ロシアにとってもはやシリアに魅力はない」と考え始めたのだ。そのシリアで今暴動が起きている。シーア派の政権でありながら、民衆の多くはスンニ派である。これはバーレーンとは逆の構図だ。これがシーア派の庇護者を任じるイランとの関係も構築する。ロシアは、「イスラムとの付き合い方を間違えると、コーカサス山脈の向こう側の領土の政治にかかわる」と見ていて、安易にシリアを切ることはできないのだ。ロシアには、いまだにアメリカの動向を常に重視している連中がいて、アメリカや国連は「戦争の前に必ずノーフライゾーン(飛行禁止区域)を設定している」ということをロシアは学習している。そのため、ロシアは「アメリカがリビアにやったことをシリアにもやるのではないか」ということを懸念し、事態を見守っているところである。 フォーリンアフェアーズ「シリア~中東におけるロシア最後の友人」

「ハッカニはどのように勢力を増したのか」 アフガニスタンには、カイバル峠からのルートが知られているが、タリバンは南の方のクエッタをベースにアフガニスタンの出入り口を確保している。南に出入り口を確保しているから、アフガニスタンのカンダハルも掌握している。しかし、カブールの方の政治は極めて混沌としてしまったのだ。北部同盟のラバニ氏が暗殺されたことがきっかけだ。ラバニ氏を暗殺したのが、クエッタをベースにしたタリバンだとするならシナリオは簡単だ。調整役として影響力を強めようとしたラバニ氏をタリバンが消したことになる。しかし、パキスタンの情報部が「ハッカニネットワーク」を利用して消したという可能性が濃厚になったのだ。パキスタンがアフガニスタンの「調整役」を消したということはアメリカにとっても大きな裏切り行為であり、何らかの説明が求められる。さらに、パキスタンの情報部と密接なつながりがある「ハッカニ」とは何かという分析も当然必要になる。いわば「ファミリー」であるが、現在のアメリカの分析では、将来的にはファミリーの誰かがアフガニスタン統治の中央に出てくる可能性があるとされている。南部で強いタリバンに対して、カブールでパキスタンを背景に影響力を強めているファミリーであると位置づけられる。 フォーリンアフェアーズ「なぜワジリスタンでハッカニは影響力を強めたのか」

「ヨーロッパの極右の行方」 ヨーロッパではどの国でも「反イスラム」を標榜した政党があり、フランスではルペンが大統領の座すらうかがっているし、イタリアではムッソリーニの孫娘も政治活動をやっている。ノルウェーではブレイヴィクが「純粋な」ノルウェーを求めて大勢の人間を殺害した。デンマークでは中道右派政権が極右政党と手を組むまでに至っている。ヨーロッパでは、第二次世界大戦を終えて、平和と自由の名のもとに「他者を排除しない」というヨーロッパの空気を作ったが、同時に、1945年にローマに「ヨーロッパ社会運動」という名の極右活動が生まれていたのだ。それが現在、ヨーロッパで力をもつようになった。ヨーロッパの極右が用いる「反イスラム」のレトリックは「ヨーロッパの一番暗い時代」を理論の基盤にしているとも言われ、もっとリベラルで他者に寛大なヨーロッパの本質をもう一度見つめ直すべきだという意見が根強い。 フォーリンアフェアーズ「ヨーロッパの極右の将来」

「国連とパレスチナのサスペンスドラマ、今と昔」 第二次世界大戦でユダヤ人がどのような目に遭ったかは周知だろう。イスラエル建国と国連への加盟は1947年となっており、国連ができてからわずか二年後のことだった。1975年に、国連は「シオニズムはレイシズムに分類できるのではないか」という見解を出している。1988年にPLOのアラファト議長が「独立宣言」を出しているが、歴史的意義を語る人は今はいない。オスロ合意などでも独立が語られるたびに、イスラエルは「ユダヤ人入植」を推進してきたのであり、1967年の停戦ラインというのはあるものの、そのラインの向うの7割をイスラエルが実効支配してしまっている。この停戦ラインでの独立はもはやまとまらない話であり、また、東エルサレムという「妥協の余地のない地域」をパレスチナが保持していることも、解決を困難にしている。そんな中で、パレスチナは国連での「完全な資格」(フルメンバーシップ)を求めたのだ。国連にいったい何ができるのかという意味では、パレスチナも懐疑的であるとされるが、不当な侵略などの国際法違反にはそれなりに役割を果たしてきたとされていて、少しでも物事を前進させるために、パレスチナはフルメンバーシップを求めているのだろうと説明されている。 フォーリンアフェアーズ「パレスチナと国連のサスペンスドラマ」

「なぜイスラエルはパレスチナ独立に投票すべきか」 パレスチナが、国連での「メンバーではない国家」としての承認の投票を年次総会に求めている。アメリカは拒否権を使って総会にかけるのを拒否しようとしているが、総会では140もの国家が「二つの国家という解決法」に合意しているとされる。解決法の基本は2000年にクリントンが示し、2011年にオバマが発展させた「1967年の停戦ラインでいったん合意したのちに、適正な領土の交換を行う」というものが現在示されている。これは到底イスラエルには容認できるものではないのだ。東エルサレムをパレスチナがもっているため、「西の壁」などの要所をパレスチナが「領土の交換」でどんな条件でも突きつけることができることになる。国際社会で140か国もの国家が「二つの国家という解決法」を支持してしまうことはイスラエルとしてはどうしても避けたいとされる。アラブ革命で、エジプトやシリアが体制不安にさらされたために、イスラエルが「シナイ半島やイスラエルの北部」で何らかの軍事行動を起こすことが懸念されているとされ、国際社会が、イスラエルにも「国連総会での投票に応じるべきだ」としているのだ。 フォーリンアフェアーズ「なぜイスラエルはパレスチナの独立に投票すべきか」

「リヤドとテヘラン~二つのライバル」 サウジアラビアはスンニ派の庇護者を自認し、イランはシーア派を自認している。この二つの国家は仲間でもあり、ライバルでもある。ともに、同じぐらいの石油・天然ガスの埋蔵量を誇る。このオイルマネーを背景にした二つの国家が中東を面白くしているのだ。サウジアラビアはイランの三分の一しか人口がないため、イランよりも人々は豊かであり、また、イランは核問題でアメリカの制裁を受けている。サウジアラビアは「石油の増産をして石油の価格を下げる」という戦術をとったら、もはや石油の増産が不可能となっていたイランの経済を直撃している。しかし、イランも負けてはいなかった。サウジアラビアの兄弟国であるバーレーンで暴動が起きたら、バーレーンがスンニ派が支配層であるものの、国民はシーア派が多数派であることから、サウジアラビアとは16マイルしか離れていないこの地への影響力を増そうと工作したのだ。しかし、軍を送るまでには至らなかった。また、イラクにおいても、シーア派の影響力を増すことにイランは成功しており、経済では劣勢に立ちながらも、政治的にはイランが勝っているのではないかとされている。また、レバノンの地においては、現政権はサウジアラビアの支援を受けた勢力が政権を維持しているが、イランはヒズボラを強烈に支援し続けている。この二つのライバル国家にアメリカがどのように関与するかが中東政策となっている。アラブ革命においては、イランは「イスラム勢力の目覚め」を期待したが、サウジアラビアにとっては革命は迷惑以外の何物でもなかった。アメリカは、パーレビ国王の追放以来、イランとは対立関係にあるとされるが、方程式のようにサウジアラビアを支持しているわけではない。非常に複雑な外交戦術をとっている。イランが核兵器を保有したら、イランが軍事的には一歩リードするのは間違いない。しかし、サウジアラビアもすぐにパキスタンの支援を受けて核をもつだろうとされている。そのために、イランの核問題は核不拡散の見地からも重要な問題となっているのだ。 フォーリンアフェアーズ「イランとサウジアラビアのライバル関係」

「イランの海への進出」 イランでは、現在、軍が二つの系統に分かれている。共和国の軍と革命の流れを受けた軍である。つい最近まで軍の船舶を三隻しかもたなかったが、現在は11隻、二年後には20隻にまで増やす予定だ。イランは2025年までに海軍の影響力をペルシャ湾のみならず、紅海からマラッカまで拡張するとしており、最近はしばしばアメリカ第五艦隊に船舶を寄せたりして、挑発的行動をとっている。ペルシャ湾をアメリカ第五艦隊が守っているのは周知だろうが、イランもようやく海に目を向けるようになったのだ。イラン・イラク戦争では45万人の地上部隊がいたが、「海」では案外貧弱だったのがイランなのだ。しかし、アメリカも「イラン海軍は念頭に置かなければならないだろう」としているようだ。 フォーリンアフェアーズ「イラン海軍のペルシャ湾での脅威」

「パレスチナ問題解決の公式なお葬式」 パレスチナの代表が国連へ加盟するという問題があるが、これにはアメリカが拒否権を用いる方向で動いている。いずれにせよ、オバマが提案した1967年の停戦ラインという提案は、イスラエルが占領した地域の70%以上をパレスチナが回復するという案であり、イスラエルは到底容認できないし、パレスチナも「これで解決したら再びイスラエルの侵略が起きる。オバマは問題を解決するつもりはない」と判断している。パレスチナの代表の国連加盟も、PLOが代表をすることから、「ヨルダン川西岸とガザ地区だけ」の代表となり、パレスチナの難民や移民を代表していない。つまり、パレスチナの三分の一の代表にしか過ぎないのだ。この経緯から、パレスチナ問題の解決は、長年の努力もとうとう「お葬式」を迎えたと言われている。事態は混迷を深め、結果的には「イスラエルとパレスチナ、つまり、エルサレムとラマラは永遠に争い続ける」ということになる運命のようだ。 フォーリンアフェアーズ「二つの国家の最終的なお葬式」 注)この記事は「パレスチナ問題」が恒久的に政治やジャーナリズムのメシのタネになることを意味することから、現場の記者がある種のむなしさを表現したものと思われる。パレスチナ関連の情報の翻訳を続けなければならない私も結構むなしいものがある。でも続けなければならない。

「イエメンの革命は乗っ取られた」 イエメンでの反政府運動は、チュニジアやエジプトに触発された形で起こったが、現在は、「3人のエリート」の争いになっているとされる。アルアーマー将軍と、ハミド・アルアーマー(将軍とは親族ではないそうだ)、そして、サレハ大統領の息子のアーメドの三人だ。アメリカ・イギリス・サウジアラビアという主要な「パワーブローカー」がこの国に関わっているが、サレハ大統領は爆弾による負傷でサウジアラビアで治療を受けていた。このサレハを、サウジアラビアはイエメンに戻すという選択を行っている。サレハを権力の座から引きずりおろそうという争いは収拾がつかなくなり、サレハは「パワーブローカー」諸国に権力の座にとどまることの承認を得ようとしたが、海外の資産を凍結されてしまった。民衆に銃を向けている以上仕方のないことだった。一方、ハミド・アルアーマーは、軍の一部を連れて民衆の側についた。民衆のエネルギーを活用して、大統領の座を狙っているのだ。ハミドの心にはインドネシアのスハルトの事例があるとされ「統制された混乱」によって権力を譲り受けようとしているとされる。サレハの息子も「共和制」を志向する勢力を指導している。10万人の民衆が主要都市に出ている現状から、イエメンは「破たん国家」になるのではないかともいわれている。この地域ではすでにソマリアがそうなっている。民衆の動向をにらみながら3人のエリートが対立している。それにパワーブローカーも現在のところ有効な手段を見いだせないというのがイエメンの現状なのだ。 フォーリンアフェアーズ「イエメンの革命は乗っ取られた」

「プーチンが戻ってくる」 2012年にロシアの大統領にプーチンが復帰することになった。今まで大統領だったメドベージェフは首相になる予定だ。今までのタンデム体制の立場を交換することになる。また、本来、力のある人が元の場所に戻るという意味合いがある。しかし、前回のプーチンの在任中とは状況が異なるのだ。「中国の膨張」「原油価格の下落」「海外にパートナーを必要としている」という3つの要素から、かつてのプーチンのような単独での強力なパワーを持つことはできないとされている。ロシアは「原油価格は最低でも1バレル125ドルは必要」というのが経済の現状だが、今は80ドル程度だ。一方のアメリカも、核軍縮にはロシアは乗ってくるだろうとみており、オバマはこれを軸にアフガニスタンでのロシアの協力を得たり、イランの核問題に向き合おうとしている。ロシアの人々は「将来の予測ができること」「国家の安定」「繁栄」を望んでいるというのが今までの発想だったが、今ではロシア国民の所得は10年前の倍になっており、これらの課題は「もはや当たり前」という状況なのだ。かつてのプーチンのイメージのままで次の大統領の任期を務めることはもはやできない。リーマンショックにおいても、G20の中で一番ダメージを受けたのはロシアだとされる。このことからロシアの財務大臣は積極財政に打って出て、財政収支を悪化させた。プーチンはその財務大臣を解任してしまったのだが、決して政策は誤りではない。また、極東、中央アジア、カスピ海、シベリアなど、かつて「ロシアが優越的支配を保持する地域」がすでに中国のものになりつつあるのだ。いずれにせよ、来年からはふたたびプーチンがロシアの大統領であり、新しい環境でその職務を果たすことになるのだ。 フォーリンアフェアーズ「プーチンが戻ってくる」

「リー・クァン・ユーの遺産の破壊」 シンガポールの伝説的指導者、リー・クァン・ユーが、ここ数年の選挙で急激に力を失って、内閣の「名誉顧問」となってしまった。リー・クァン・ユーは「安定と繁栄と民主主義」をシンガポールにもたらしたが、もはや今の国民はその伝説を知らない。リー・クァン・ユーは「民主主義のバトンタッチは必ずしも安定と繁栄のバトンはつながない」「民主主義は好奇心を満たすが、より良い統治と、腐敗の防止、経済発展とは別の問題」と発言している。現在、リー・クァン・ユーの息子と、トニー・タン氏が大統領の座を争っているが、若い世代の指導者が抱える問題は多い。移民による町や公共機関での人の混雑、市場の冷え込みなどの問題を抱えていて、伝説的指導者が築き上げたものを正確に理解して、それを決して当たり前だと思わずに、シンガポールの「安定と繁栄」を維持できるのかは分からないとされている。 フォーリンアフェアーズ「リー・クァン・ユーの遺産の破壊」

「ペンタゴンとサイバースペース」 アメリカが軍の指揮系統にすでにコンピューターネットワークシステムを使用していることは知られているが、このようなサイバースペースを軍の指揮系統に使用している国は世界で30か国だとされる。それ以外の国は旧式の伝達システムを使用していることになる。このことから、「サイバー空間でのパールハーバー」が起きることが指摘され、オバマ大統領はペンタゴンに5億ドルの予算を割り当てて対策を練ることにした。ペンタゴンが民間の知識を借りるということは軍の機密情報を民間に分析させることを意味し、すでにその情報量はテラバイトの単位になって民間に知られている。このことから、アメリカ軍に対して悪意のある集団と「知識」が結び付かないようにするのも大事だし、いろんなセキュリティーシステムの構築が必要になるのだ。すでに、エストニアやグルジアでは「軍のサイバー攻撃」の被害が報告されており、決して想像上の問題にはとどまっていない。アメリカ軍の指揮系統を狂わせるということは、攻撃力を弱めることでもあり、「バイト」や「ビット」が「銃弾」や「爆弾」になることを意味する。戦争状態になったら、あらゆる「サイバー戦争」を想定しなければならないのである。 フォーリンアフェアーズ「ペンタゴンのサイバー戦略」

「パキスタン軍統合情報局(ISI)」 ムレン将軍がISIを指揮するようになってから、アフガニスタンの各勢力の和解に務めていたラバニ氏が暗殺され、また、パキスタンのアメリカ大使館が襲撃されるなどした。ハッカニネットワークというテロ組織が関与しているとも言われ、パキスタンは、アフガニスタンにおいて反パキスタンの立場の北部同盟だけでなく、アメリカとも敵対する意思表示を示したことになる。そのため、アメリカはもし、ISIがアメリカの大使館襲撃とハッカニとのつながりに関与しているのなら、何らかのレトリックでの対応が求められるようになる。公然と裏切った連中と付き合い続けるのには「説明」が必要なのだ。アフガニスタン政策にはアメリカは「パキスタンに依存しすぎである」とされ、もし、イランのチャーバハール港が整備されるのであれば、そのルートからアメリカはアフガニスタンに入れると言われる。今後の課題であろう。今現在は、パキスタンの各セクトに振り回されっぱなしなのが現状なのだ。北部同盟は反パキスタンの立場なので、インドのデリーも北部同盟寄りに動くことになる。今はパキスタンのムレン将軍がキーパーソンとなっているようだ。 フォーリンアフェアーズ「ムレンが掌握したISI」

「カタールのリビア介入の背景にあるもの」 カタールという小さな国が、エリートを擁することで、リビア問題の仲介役を務めた。なぜこのようなことが可能だったのだろうか。カタールはミラージュジェット機などを保有し、アメリカ空軍基地も協力的だ。しかし、基本的に「同時進行で多くの問題を背負うことはしない」とされており、リビアに関しても、反乱軍に味方した企業が石油を売り続け、アルジャジーラもインサイダー情報を報じ続け、リビアの制圧を成功させた。カタールは「シリアには介入する力はない」とも言われる。リビアのような広大な国土をもたないシリアは、リビアとは条件や複雑さが違うとされ、カタールのエリートも手を出さないのだ。基本的に、イラク、ヒズボラ、ハマスなどの主要人物と交流を深め、西側とうまく行かない傾向のあるこれらの人物の仲介役を務めるのがカタールの主な仕事だとも言われる。そもそも、リビア問題のような大きな仕事をまとめる役割は求められていないのだ。 フォーリンアフェアーズ「カタールのリビア介入の背後にあるもの」

「アルジャジーラのカンファー氏の辞任」 アルジャジーラは、24時間のニュース放送を衛星を通じて行っている。1996年に創業し、それ以来、アラブ社会の情報をセンセーショナルに報じることで視聴者を獲得してきた。しかし、アラブの春は、たとえば、2009年に初めてアラビア語になったとされるフェイスブックなどを一気に普及させ、また、アルジャジーラももはや報道姿勢は中立ではない、という点が指摘されたりした。アラブ社会はもはや、情報が高くつき、非常に複雑化している。そんな中で、業績はいいとされているアルジャジーラの社長が辞任しているのだ。 フォーリンアフェアーズ「アルジャジーラのカンファー氏の辞任」

「パレスチナの国連加盟への困難な道」 パレスチナのアッバスが、アメリカの拒否権を抑えてでもパレスチナの国連加盟を目指している。しかし、オブザーバーになるにせよ、メンバーではない加盟国と説明されるにせよ、「仕組みを正確に理解していないのではないか」と指摘されるに至っている。いろんな交渉相手がいる中で「国連」というのは最後の言葉であり、それ以外に、何らかの有意義な選択肢だとは思えないのがこの国連加盟の問題だ。アッバスは、ラマラとブリュッセルの間で、パレスチナの英雄として「いつもの仕事」をしただけだとも言われ、問題の解決につながるとはだれも考えていないようだ。 フォーリンアフェアーズ「パレスチナの国連加盟への困難な道」

バーレーンの民主化とアメリカ」アメリカはアラブの春に対しては「歴史的に正しい側につく」としているが、バーレーンに対しては非常に難しい立場にある。バーレーンは国王もカリファ一族で構成されており、非公選の首相も1971年から40年にわたって世界最長の任期を誇る首相をこの一族から出している。バーレーンの重要性は、アメリカと緊密な関係にあり、地政学的に湾岸の要衝にあることから、アメリカの第五艦隊がバーレーンに駐留し、湾岸の輸送ルートを守っていることにある。この輸送ルートの安全は西側諸国のすべてに恩恵をもたらしている。しかし、王政が抑圧的であり、腐敗していることから、民衆が体制の変革を求めた。この体制の変革はサウジアラビアをも直撃しかねない。サウジアラビアは、エジプトの民主化をアメリカが支持したことさえも「裏切り」とみなしていたのだ。カリファ一族には西側諸国で教育を受けた41歳の皇太子がいるが、この皇太子が、反政府グループとの妥協を模索しているのだ。首相を公選にしたり、議会を作ったりする妥協案を提示している。そうなると、アメリカは反政府勢力との連携の可能性も分析しなければならなくなる。このことから、この皇太子の対応がどこまで本気かは「投獄中の政治犯釈放」が試金石になるとされ、アメリカは第五艦隊の移転も視野に入れて、バーレーンの行方を見守っているのだ。バーレーンの民衆も、抑圧的体制が続くのなら第五艦隊すら必要ないと考えるまでに至っている。湾岸の石油の輸送と深くかかわった問題だ。 フォーリンアフェアーズ「バーレーンの民主化とアメリカ」

「市民社会とテロとの戦い~頭のいい対応」 イスラムがテロを起こす可能性は10年前に比べて著しく減少したのは事実だ。パキスタンで活動している主要な連中よりも、今となってはハリウッドで映画を作っている連中の数の方がはるかに多い。それでも、ニューヨークのマジソンスクエアガーデンでの自動車爆破未遂事件や地下鉄爆破未遂事件が大きく報道されている。平和な市民社会ほどセンセーションにこのようなものに反応し、テロリストを喜ばせている。安全すぎる社会は危ういものなのだ。危険を一定のレベルに維持する社会が一番いい。交通事故が起きたり、いろんな事故が必然的に起きるのが普通の社会だ。そういう「一定のレベルに危険を維持する」のがテロとの戦いに必要なのだ。 フォーリンアフェアーズ「市民社会と、テロ対策、情報戦」

「ボコ・ハラームへの対策は武器を使わないこと」 ナイジェリアの北部のイスラムを拠点にするテロリストグループ、ボコ・ハラームは8月26日に国連ビルに自動車を突入させて爆破させ23名を殺害した。この組織への対策に、アメリカや英国・イスラエルが動いたが、ボコ・ハラームを分析してみると、北部の貧困や腐敗を標的にしたムーヴメントであり、ブログも一週間以上更新されていない。イスラム国家の樹立を求める原理主義だが、その対策は、武器によって行うよりも、政治的・外交的手段によって行ったほうが有効であるとアメリカは考えている。そのために、西洋の科学を否定する連中にアメリカは、彼らのイスラムの伝統に根ざしつつも適切な教育を与える学校を各地につくるなどの対応を取り始めた。ナイジェリア北部にはすでに7千5百万人のイスラムがいて、これはアフリカのイスラム集団としては最大規模だ。これらの連中を力でコントロールすることはナイジェリア政府にもワシントンにも不可能だ。そのために、政治的・外交的な手法で彼らの運動の本質を分析し、危険な方向に向かわないように誘導するという対応をとっているのだ。 フォーリンアフェアーズ「ボコ・ハラームと戦うのに武器は必要ない」

「朝鮮半島の今」 朝鮮半島は今、どうなっているだろうか。韓国は経済発展が著しく、情報化、グローバリゼーション、民主化の波に乗った。そしてG-8の国以外で初めてG-20のホスト国を務めるまでに至っている。一方、北朝鮮は、核拡散の脅威であり、2010年11月には、朝鮮戦争終結以来初めて、韓国領内に軍が侵入し、軍人や民間人を殺害している。両国の動向は非常に対照的で、そのため、周辺国は、より大胆で柔軟な対応がとれるようになったと言える。この朝鮮半島の二つのライバル国家は、アジアの安全保障の主要テーマであり、周辺国もいろんな思惑をもって注視しているのだ。 フォーリンアフェアーズ「新しい朝鮮半島の地図」

「パレスチナの国連での一票と新国家の樹立」 パレスチナが今年の9月に国連で「メンバーではない国家」として国連の承認を得るという作戦に出た。これに対しては「あの地域を占領している国ではない国連を交渉相手にしてきた」と、その有効性を疑問視する声もある。オバマは1967年の休戦ラインを国境線とする主張に傾いているとされ、パレスチナの意向も同じだ。しかし、ガザ地区はパレスチナのハマスが占拠しているし、ヨルダン川西岸はパレスチナは40%しか掌握していない。ヨルダン川西岸は60%をイスラエルが制圧しているのだ。なによりも、東エルサレムの動向がシオニズムの問題から重要な争点となる。すべての地域を制圧していないのに独立を宣言すると、いつイスラエルの侵略が起きるか分からない。この地域は、中東の問題でもあり、世界の問題でもある。この地域をめぐって中東が動き、世界が動く。そういう地域で不安定な決着はつけられないのが現状なのだ。 フォーリンアフェアーズ「国連の票とパレスチナの新国家」

「ヨーロッパにとってのパレスチナ問題」 イスラエルとパレスチナの紛争に関しては、2009年にオバマがカイロでのスピーチで解決に向けて動くと宣言したが、オバマは1967年の停戦ラインを国境とするとしたことで、イスラエルはこれに激怒し、パレスチナは「オバマのせいで交渉は止まった」と判断している。今、アラブの連中は、事態を動かせるのはヨーロッパだけだと考えている。フランスやスペインの外相の動きに注目しているのだ。中東問題はヨーロッパの安全保障ともかかわっていることから、今はこの紛争の解決のキーはアメリカにはなくヨーロッパにしかないというのが、オバマの「1967年の停戦ライン」という発言のもたらした関係国の反応だったのだ。 フォーリンアフェアーズ「ヨーロッパにとってのパレスチナ問題」

「リビアと人道的介入の将来」 リビアにおいては、カダフィが統治権を失い、まさにオバマ政権の外交的大勝利に終わった。背景には、ロシアや中国があまりリビアと利害関係をもっていなかったことや、他のアラブ諸国も自国に体制不安を抱えていたことなどから、アメリカやNATO、国連が非常に活動しやすかったことがあり、また、スーダンと異なり、リビアは地政学的にも攻撃しやすく、人口が640万人と少なかったことなども挙げられる。しかし、このリビアへのアメリカの介入は「人道的介入」と位置付けられるが、当然、リビア国内での残虐行為を念頭に置いているわけである。どのような理由でアメリカはリビアに介入したのかの説明は意外と難しい。ソマリアでは飢饉で320万人が亡くなるとされているのに、なぜアメリカは動かないのだろうか。これは、政治的複雑性が異なっていたりして、結局「コストに見合わない」などの理由で説明するしかない。今回のオバマの大勝利とは裏腹に、将来もこの「人道的介入」が何度も繰り返されることは想定されていない。それほど、国際法上の正当化が難しい軍事行動なのだ。 フォーリンアフェアーズ「リビアと人道的介入の将来」

「アルカイダ~アッティヤの死」 ビンラディンが死んで、後継者はザワヒリだとされているが、アメリカはアッティヤの殺害に成功したことを重視している。アッティヤは、9・11テロ後の十周年に再び何かの成果を残そうという手紙をビンラディンに出していたことをアメリカがつかんでおり、その動向を注視していた。アッティヤは戦術家としていろんなことを学習していた。アルジェリアでは村を焼き払ったが、そのような行為は、恐怖を引き起こすけれども、同時に強烈な憎しみにさらされることを知った。また、イランが必ずしもイスラムのみに立脚するものではなく、機会主義的で、プラグマティズムにもとづいて行動していることも学習していた。この戦術家の殺害に成功したことは、アルカイダにとってどんな意味を持つだろうか。ザワヒリに「次はお前の番だ」というメッセージを送ることになり、また、アルカイダの戦術の弱体化ももはや免れないのだ。 フォーリンアフェアーズ「アルカイダ~アッティヤの死」

「リビアに民主的な選挙が根付くまで」 カダフィが政権を追われても、いまだに武装した連中が対峙しているのがリビアの現状だ。国連は、選挙までに18か月間は必要と見ている。第二次大戦後に、選挙を急いだ国ほどそのあとに内戦が起きていることに学んでいるのだ。対抗勢力のどちらかが武力ですでに敗北していれば内戦の可能性は半分になるが、しかし、選挙監視団が結論を急ぎすぎると60%の可能性で失敗すると言われている。また、地方分権と自治が進んでいれば、内戦の可能性は五分の一にまで減る。要は、リビアに市民社会を根付かせることが大事であり、カダフィが残した官僚機構と、石油による富を活用しながら、腐敗をなくすことが必要だ。国連は、憲法をつくるのに6~9か月は必要としており、さらに選挙に関するルールを決めるのにさらに6か月は見ている。最終的には選挙をやらなければならないが、その前提やタイミングを間違えると、再び内戦が起きてしまうということはすでに国連がデータとして学習しているのだ。 フォーリンアフェアーズ「リビアに民主的な選挙が根付くまで」

「ボコ・ハラーム~ナイジェリアのテロ集団」 ボコ・ハラームとは、ナイジェリアのイスラムセクトで、警察や政治家、他のセクトを2009年以降、暴力的に攻撃し始めた集団だ。ナイジェリアは北部にイスラムが住み、南部にキリスト教徒が住む。経済格差は大きく、北部の貧困は南部に比べて極度に悪い。政治的には、イスラムのエリートがナイジェリアデルタの石油利権を背景に地域振興を図ることで基盤を固めている。大統領はイスラムとキリスト教徒で交互にローテーションしているが、現在はキリスト教徒のジョナサンが大統領をやっている。ボコ・ハラームは、モハマド・ユースフが2002年に結成している。14世紀の思想家イブン・タミーヤの急進的な思想に影響を受け、進化論の否定や、銀行というシステムを認めないなどの特徴があるとされる。警察や政治の腐敗を徹底攻撃し、北部の学生や専門職の人、さらにはナイジェリアのエリートにも食い込んでいると言われている。警察を敵視し、バイクでヘルメットをかぶらないなどの反抗手段をとることが知られているが、司法に敵視され、800人が殺されて、ユースフの義理の父まで殺されたことから、組織は攻撃性を強めてしまった。腐敗や貧困が背景にあるだけにボコ・ハラームは混乱したナイジェリアでも「テロの温床」としてアルカイダともつながりを深めている。ナイジェリアはアフリカでもっとも人口の多い国で、1億5千万人が住み、350の民族がいて、250の言語が使用されている。南部のキリスト教徒と北部のイスラムの衝突だけでも1999年以降1万4千人が死亡している。しかし、ボコ・ハラームは、キリスト教徒よりもイスラム教徒を多く殺しているのだ。「国家の水準の向上」というスローガンは一致しているが、主張は必ずしも統一されておらず、政策も具体性を欠き、宗教色が強い。急進的なイスラムということだ。2011年に国連事務所を爆破し、国際社会はこの組織の危険性を認識した。ナイジェリアの混乱がボコ・ハラームを生み出し、国際社会が認識するに至ったのだ。 フォーリンアフェアーズ「ボコ・ハラーム」

「アフガニスタン侵略、今と昔」 アフガニスタンを侵略した国はことごとく失敗するという伝説がある。その原因を「アフガニスタンにおける戦争」という本で明らかにしたのがピーター・トムセン氏だった。この国は非常にローカルな地域の独特な風習をもち、中央集権国家を嫌う国だ。国家として統合されておらず、無秩序な状態だ。トムセンは1989~92年の反ソビエトジハードにワシントンから派遣された経験を持つ。すべての国から押し付けられたイデオロギーにこの国は抵抗するとされ、大胆な政治的変革や、この国の文化や風習を理解しない侵略は失敗するとトムセンは言う。極度に分権化され、暴力よりもコンセンサスが重視され、部族や身内だけを大事にするこの国では、国家と呼べる仕組みができたのは20世紀になってからなのだ。カブールはしかし、全土を掌握しているとは言えない。そんな国に、ラムズフェルドは「欲しくはない国」であるアフガニスタンを侵略している。アフガニスタンの3000年の歴史を振り返ってみよう。ギリシャ・ローマ・匈奴・モンゴル・ムガール・ペルシャ・トルコなどが侵略したが、最初は強大な力で制圧しても、来た時よりも多くのものを失って帰っていくというパターンをすべての国が繰り返している。唯一、1939年の英国が、インドとソビエトの緩衝地帯として傀儡政権を立てるという作戦をとったことがある。この時ですら、16000人で訪れた英国軍は、1942年の内戦で「生還者一名」という結果に終わっている。英国はアフガニスタンで同じことを三度繰り返した。1979年のソビエトのアフガニスタン侵攻においても、最初は歓喜の声が上がったが、マルクスレーニン主義がこの国で反発を受けた。アフガニスタンには「プロレタリアート」と呼べる人がいないとされていた。ソ連は絨毯爆撃を繰り返したりした。モスクワは統治の失敗を悟り、傀儡政権を立てたが、ことごとく裏切りが続いた。クリントン政権は、アフガニスタンに関心がなく、「何か起きたら対応する」という政策をとった。アメリカのアフガニスタン政策の失敗は「パキスタンに頼りすぎる」ことにもあるとされる。世界で五番目に核兵器技術が豊富なパキスタンはCIAも利用しやすいが、テロの温床ともなってしまうのだ。パキスタンのカイバル峠とスピンボルダックしかアフガニスタンに入る道はないとも言われ、パキスタンがこれをうまく活用している。このようなアフガニスタンを周辺国がうまく統治する可能性があるとすれば、アフガニスタン内部に「正直で有効な」統治機構が必要とされ、「常識」という当たり前のことがまかりとおらなければならないとされる。そういうレベルから国家をまとめていかなければならないのが現状なのだ。 フォーリンアフェアーズ「アフガニスタン侵略、今と昔」

「アフガニスタン~その地をならす戦争」 第二次世界大戦においては、60%のアメリカ人が週に一度、映画館に足を運び、戦争映画を堪能し、これが戦意発揚の効果を上げた。ベトナム戦争のときはテレビが普及し、各局が「血が流れたのなら報道する」という姿勢をとったため、6万人の死者を出したベトナム戦争は「不人気の戦争」となった。今のペンタゴンは、「ジャーナリストは兵士と行動を共にさせる」という方針をとり、兵士は「プロデューサーでもある」と自負して、戦闘シーンを撮影させているのだ。このようにして撮影された戦闘シーンがインターネットに流れ、デンマークの兵士が、タリバン兵を殺害し「冷静さが勝敗を分けた」と親指を立てて語ったシーンに平和に暮らしている本国の世論は激高した。今のアフガニスタンでの戦闘では「英雄になる将軍」はいないとされ、上官も下士官も同じ危険に身をさらしている。「攻撃されたら反撃するだけ」というポリシーのもとに、基本的に、この地域を豊かにすることが味方を増やす、と考えているのだ。その意思をその地域の住民に複雑な言語で翻訳して伝えているのだが、地域の住民は「タリバンについて語ったらのどを切られる」と考えているのだ。アメリカ兵は「アフガニスタンを豊かにするという方針を伝えるのは構わないが、現地住民と行動を共にしてはいけない」ということも学習している。武器や軍事技術ではアメリカは明らかに他を圧倒する技術をもっている。そのため、アフガニスタンにはもはや「テロリストの聖域」はないとされ、パキスタンでタリバンやアルカイダはアフガニスタンの戦争をコントロールしている。ベトナム戦争では8万人のベトコンがいたので、アメリカは一般市民まで殺したが、今は「攻撃されたら反撃する」という政策を明確にするだけの力をアメリカは持っている。しかし、アフガニスタンの地域住民を味方につけるだけの知識がないのだ。お金だけでは解決しない。その地を知り尽くしているタリバンには資金力だけでは勝てない。ゲーツ国防長官は「アフガニスタンほど困難な戦術を求められる地はなく、今後のアメリカのアジア・アフリカ・中東での米軍の展開を考えるうえでは、この教訓を知らない人間には戦術を立てることは不可能」とまで言わせている。 フォーリンアフェアーズ「その地をならす戦争」

「グローバリゼーションと失業」 グローバリゼーションは、市場が一つになることだが、輸送や通信のコストが安くなったことや、人間が作り出す「壁」が低くなったことなどが背景にある。輸入製品の価格が安くなることは輸出国と輸入国の双方に利益になる。しかし、経済発展はその国の構造まで変えてしまう。世界の人口の40%を占める中国とインドが世界の労働市場の構造を決めてしまうとも言われる。これらの国は、今後は何らかの付加価値を付けた製品を売ろうとしている。30年前までは先進国の特権だったものだ。インドと中国の労働市場や雇用形態の考察抜きには、日本の雇用を語ることはできないのだ。 フォーリンアフェアーズ「グローバリゼーションと失業」

「インドの腐敗問題」 インドのニューデリーで15日間にわたる市民集会が開かれている。猛暑の中で雨が降ったり、高い湿度の中で行われているのだ。背景には、政府の腐敗への批判がある。現在、インド議会は腐敗防止法案を審議しているが、一般の公務員を対象としたもので、これでは不十分であるという人々が集会に参加している。リーダーのハザレ氏は、先日まで政治犯として拘束されていたが、市民運動の高まりに圧される形で保釈を命じられた。しかし、ハザレはこの時、インド政府に市民集会への参加を認めさせている。ポリシーはガンジーの「非暴力不服従」だとされる。インドは民主主義国家であり、野党も存在する。野党とハザレ氏がどのように協力するかは不明だとされる。インドの近年の経済発展で、ビジネスにおける許認可権をめぐる汚職は確実に減っていたのだ。しかし、争点となったのが、インドの携帯電話会社が政府の特権を利用して同業他社を排除する価格設定をしたことや、1999年の印パ戦争の未亡人向けの高級住宅地を警察官に提供したりとか、あとは現場の警察官の間で横行している賄賂などがやり玉に挙げられた。もっと腐敗している国はあるだろうが、インド市民は、英国からの独立をした時に匹敵する第二の革命と呼んで運動しているのだ。問題は、腐敗防止法案の行方であり、これに政府が妥協するのかが争点となっている。また、この集会が必ずしも政権交代には結びつかない構図もあるとされる。現在の野党も政権をとっていた時期があり、必ずしも腐敗防止を積極的に掲げられる立場ではないのだ。 フォーリンアフェアーズ「インドの腐敗問題」

「デイヴィット・キャメロンとロンドンの暴動」 イギリスの暴動は5人の死者と、数百万ドルの損害をイギリスにもたらした。背景には、成立して一年半になるキャメロン政権の政策があるのは明らかだ。キャメロン政権は、自治を求める民衆に「大きな社会」という政策を打ち出して選挙に勝ったが、過半数には至らず、自由民主党との戦後初めての連立政権を組んだ。この「大きな社会」とは、隣人同士が助け合うことで、政府の予算の大幅削減を試みるものだった。キャメロンは警察官を1万6千人削減している。キャメロン政権はすぐには崩壊しないだろうが、数か月後にはかなり厳しい局面を迎えるとされている。自由民主党とは政策が異なる部分があり、個人主義に立脚する自由民主党も、昨年の地方選挙の成果が芳しくなかったことから、今すぐ下野することは考えにくい。暴動が起きた時に、警察は「個別の犯罪として検挙するのではなく、騒乱罪として扱う」と声明を出したことから、一気にロンドンは無法地帯と化した。キャメロンがロンドンに投入した警察官がまさに1万6千人だったのは皮肉だ。自由民主党は、暴動に参加してスーパーから飲料水を盗んだ学生を懲役刑に処したことなどを、「公正な司法ではない」と批判している。また、キャメロンは、貧困や福祉政策などが暴動の理由ではなく、各自のモラルの問題だ、と発言し、現状認識への批判の声が上がった。キャメロンは、地球温暖化の調査に北極を訪れるなど熱心な部分もあるのだが、内政問題に関しては、財源の制約もあり、予算削減という政策がこのような結果をもたらすことは、今後の日本にとっても貴重なデータとなるのは間違いない。隣人同士の助け合いというスローガンだけでは人間は動かないのだ。 フォーリンアフェアーズ「デイビッド・キャメロンとロンドンの暴動」

「9・11テロ回顧」 9・11テロがアメリカの外交政策のすべてを変えたと言われているが、10年経過して振り返ってみると、アメリカの覇権主義・単一性の志向・民主主義・自由市場の追求という文脈においては、単なる歴史の一ページに過ぎなかったのではないかとも言われるようになっている。では、9・11以前のアメリカの外交政策はいったいどのようなものだっただろうか。アメリカは「中国とロシア」を念頭に行動していた。そのうえで、中東政策をどのようにこの二つの国と絡めるのか、つまり、ミサイル防衛システムの構築が中東と密接に関わっていたのだ。さらには、イラン・イラク・リビア・北朝鮮などの「ならず者国家」との付き合い方も判断要素となっていた。バグダッドの「飛行禁止区域」で、米軍機が撃ち落されたらどう対応するのかなどを熱心に研究していたのだ。国家安全保障委員会のリチャード・クラークはテロの危険性に警鐘を鳴らした人物だったし、CIA長官のジョージ・テネットも「事態は危険水域を超えた」と発言していたが、パウエル国務長官も、ラムズフェルド国防長官も、ライス補佐官も、さらにはブッシュ大統領もこのようなテロの危険性は認識していなかったのが真実だった。「オサマ・ビンラディンには誰も興味がなかった」のが真相だ。そういう意味では、たとえオバマもブッシュの外交方針の文脈に位置づけられるとしても、9・11テロの意味は動かしようがないと言える。 フォーリンアフェアーズ「9・11テロ回顧」

「避けることのできないスーパーパワー」 中国は超大国としてアメリカにとって代わるのだろうか? GDPや貿易収支、国家としての力量から考えれば答えはイエスだ。アメリカが考えている以上に、中国は巨大で、発展は速い。債権者は債務者に対しては独裁者のようにふるまう。債務を負った国家は今まではIMFを頼っていた。しかし、90年代のアジア通貨危機に対して、カンター通商代表は「脂ののったお肉」と呼んだ。なぜなら、アジア市場が一気にアメリカに開かれたからだ。1956年のスエズ危機では、イギリスがスエズ運河を制圧したが、アメリカが資金を大量にイギリスに流して撤退させた。このとき、イギリスは「我が国の覇権はこれで終わった。アメリカは200年後にこの屈辱を味わうだろう」と言った。アメリカは、自分たちはまだ発展すると考えており、中国をとりわけ傑出しているとは考えていない。また、中国は多くの問題を抱えすぎているとしている。いずれは、国際社会で役割を共有しなければならないだろうが、運転席まで奪われるとは誰も考えていないのが現状なのだ。 フォーリンアフェアーズ「避けることのできないスーパーパワー」

「カダフィ後のリビアの国家建設」 カダフィの没落が目の前に来ている。アメリカや同盟国は、リビアの国家建設にどのくらいの力が求められるだろうか。ボスニアやコソボ・イラク・アフガニスタンと比較してみよう。その際に、どのくらいの大きさをもった国なのか、どのくらいの富をもっているのか、どのような人種構成か、地政学的な分析、政治的な成熟などを視野に入れるのだ。国家建設というのは非常にエネルギーを集中させる作業だ。リビアはコソボやボスニアに比べれば2~3倍の大きな国であるが、イラクやアフガニスタンの三分の一程度だ。だいたい90年代のバルカン地方に注入したエネルギー程度であり、9・11テロ後の処理よりは時間や費用がかかる困難さだと言える。リビアは比較的豊かな国なのでこれらの国よりは経済の回復は速いだろう。また、言語もベルベル語を話すマイノリティーが1割ほどいて、西部や南部で自治を確立している。カダフィはこの国を「分割と支配」という手法で統治していたのだ。ボスニアやコソボ、アフガニスタンとの大きな違いは、国境で接する敵対的な国が存在しないということだ。これは大変有利に作用する。また、リビアはアラブ国家である以上、アラブの秩序にしたがった国家建設が求められる。西側諸国の軍事介入も空からの攻撃にとどまっており、ゲリラ戦などを展開しなくて済む。しかし、イタリアの戦前の支配から、立憲主義を経て、カダフィの独裁体制に入っており、政治的に成熟していないという点が問題だろう。東西に分かれてしまった軍事力・警察力を一つにする努力も必要だ。これらの事情を考えてみても、やはり民主主義を根付かせるには思ったよりは難しいことは覚悟する必要はある。 フォーリンアフェアーズ「カダフィ後のリビアの国家建設」

「アルカイダの窮地」 アラブの春は、独裁者が支配する国々に「イスラム国家」を樹立するチャンスを与えた。これはまさにアルカイダの悲願だったはずだ。かんがえてみれば、ソ連崩壊の時もこのチャンスはあった。しかし、アメリカがサダム・フセイン包囲網をアラブ諸国に敷いて、この地域に影響力を確立してしまったためその願いはかなわなかった。今回の、アラブの春ではイスラム国家の樹立がなされる可能性がある。しかし、事態はアルカイダの思惑とは異なる方向に向かった。政治参加をしたいイスラムのグループは、「爆弾より票を用いる」手法で国家を統治したいと考えているのだ。そうでなければアメリカの理解は得られない。たとえ、イスラム国家樹立という念願がかなったとしても、アメリカの影響力排除までは進まないのがこの地域の国家統治なのだ。 フォーリンアフェアーズ「アルカイダの窮地」

「イランはどうやってアサドの地位を守るか」 シリアのアサドが民衆の暴動に遭遇している。しかし、アサドの地位は、チュニジアやエジプト、リビアの指導者とは状況が異なるのだ。イランが、シリアを「アメリカとイスラエルからイランを守る最前線基地」と位置付けているからだ。そのために、イランは「イスラムを標榜し、民衆の支持があり、反米的運動ならあらゆる勢力を支持する」としながらも、シリアの民衆を「アメリカが、イラン・シリア・ヒズボラのラインを破壊しようとしている」として一切資金は流していない。それどころか、E-Mailや携帯電話などを監視するシステムをアサドに提供している。この「社会監視システム」の技術はイランが世界最高峰だとされ、中国よりも技術は上回っている。また、イランは、シリアの民衆に好意的な発言をしたヒズボラへの資金を止めたりもした。あらゆる手段を使って「アメリカとイスラエルからイランを守る最前線」を守ろうとしているのだ。もし、アサドが権力の地位を失い、シリアに新政権ができたら、イランはためらうことなく新政権とも良好な関係を築こうとするとされる。それほど重要な地域なのだ。 フォーリンアフェアーズ「イランはどうやってアサドの地位を守るのか」

「アメリカの軍資金の調達方法」 オバマが現在、執務時間の多くを米国債の問題に割いているとされるが、これはアメリカが戦争の資金をどこから出しているかの歴史と深くかかわっている。アフガニスタンとイラクでの戦争ではすでに1670億ドルを費やしており、これは退役軍人の年金を除いた金額だ。最終的には3兆ドルにものぼるとされている。これらの資金をアメリカが国債により調達していたことが大きな問題だ。歴史を通してみると、アメリカの戦争の歴史は税金の歴史だったのだ。1812年の米英戦争で、関税の値上げと固定資産税を導入し、南北戦争では所得税を導入した。また、この時に北軍は3%の消費税を課している。1898年の米西戦争では、土地家屋税と電話税を課している。第一次大戦では、かつてない規模の戦争になったため、320億ドルを費やしている。このときに、所得税の大幅拡張と、相続税、法人税を課している。第二次世界大戦ではまさに総力戦となった。2000億ドルを費やしている。軍事予算はGDPの37%を占め、歳出の90%を占めた。必死だったのはアメリカも同じだった。朝鮮戦争の時に、ホワイトハウス報道官のサム・レイバーンが「戦地に赴いている我が息子たちが、戦場から帰ってきたときに戦費を払うのが国債という仕組みだ」とこの制度を批判し、アメリカの総意となっている。9・11テロが起きるまでは、アメリカは戦費調達は税金で行ってきたのであり、国債による調達を始めたのはアフガン・イラクでの戦争からである。オバマが現在、どんな問題に頭を悩ませているのかを端的に示している。 フォーリンアフェアーズ「戦費の調達」

「アメリカの歳出削減の世界への影響」 オバマは8月2日に議会との話し合いで財政赤字のコントロールに関する署名を行っている。10年間で1兆ドルの歳出削減を行い、その中での軍事予算は3500億ドルを占める。これがアメリカの外交政策に影響を与え、アメリカの世界への影響力の限界を設定するのは明らかだ。歳月は何を変えたのだろうか。数年前から「アメリカはすでに自分たちの領域の限界を越えているのではないか」という指摘はあった。今後10年間でアメリカの諸外国へ与える影響力は低下するのは間違いない。アメリカには社会保障制度や医療制度への資金も必要なのだ。アメリカが、冷戦時代や9・11テロ後の軍事予算の支出を「感情」に依存していたのは間違いない。実際の危険以上のおカネを使っている。さらに、どの政治ファクターも国防総省に好意的ではなく、優先順位を上位には位置づけていない。ティーパーティーというのがあったが、あれは「小さな政府の実現と軍事予算の削減」を主張したものだ。それでもアメリカは冷戦後に、ハイチ・コソボ・ボスニア・アフガニスタン・イラクなどに戦線を広げていた。アメリカのドルはいまだに世界の基軸通貨であり、世界で最も豊かでオープンな市場をもっている。また、アメリカ海軍は「太平洋」「大西洋」という二つの大きな航路の安全を守っているのだ。ペルシャ湾の石油の輸送も守っている。アメリカが世界の安全に果たす役割は果てしなく大きく、それが現在「財源」という問題にさらされているのだ。 フォーリンアフェアーズ「アメリカの歳出削減」

「ロンドンの暴動」 1981年にサッチャー政権は、新自由主義の政策が貧困層に不満をもたらすのを感じ、警察力の強化へと資金を流し、人員を増やしている。これがロンドンのブリクストンやリバプールのみに暴動がとどまった背景にあった。今のキャメロン政権は「大きな社会」という政策を掲げ、警察・軍事まで予算を削減してしまったため、暴動が止められなかったという構図がある。アメリカはイギリス各地に飛び火した暴動を「ブリクストンの子供たち」とキャメロンの政策の失敗を皮肉っている。1981年にはダイアナ妃のロイヤルウエディングがあり、翌年にはフォークランド紛争があった。今は、ウィリアム王子のウェディングがあり、アフガニスタン戦争がある。いろんな意味で「ブリクストンの子供たち」は当時と比較される存在なのだ。 フォーリンアフェアーズ「ブリクストンの息子」

「経済格差とどう向き合うか」 グローバル化を迎えた今日では「経済格差」という問題が最重要テーマとして国際社会で共有されている。これはなぜだろうか。昔だって経済格差はあった。しかし、古くは「隣町の事情すら知らない」という情報の問題から、この問題はクローズアップされなかったし、産業革命以降は、資本主義のメンタリティーとして「成金が散財してくれる」という発想が根付いていて経済格差はあまり標的にはならなかった。今では、優れたテニスプレーヤーがスーパープレイを見せることで人々に富への納得を得たり、また、上の人たちはどんな暮らしをしているのだろうと情報を公にすることでむしろ庶民の夢をかきたてている。アメリカも、チュニジアやエジプトと同じぐらい格差はあるのだ。研究から明らかになっているのは、「汚職や腐敗」「失業」が人々の格差への怒りに火をつけるとされている。国際社会がチュニジアやエジプトから学んだのは「いかに平等にするか」「いかに失業率を下げるか」「いかに腐敗や汚職をなくすか」の三つなのだ。これを忘れた国は民衆が暴徒と化すことを忘れてはならない。 フォーリンアフェアーズ「経済格差と不満」

「デリーからの手紙」 インドの中心部の町並みは汚い。ビルのわきにはゴミが積みあがっている。さて、ここで、子供が空き瓶を三本集めたらバスに乗れるお金に換えられるという仕組みがあるとしよう。これがまさにインドのリサイクル産業の根本の発想だ。しかし、インドのゴミのリサイクル産業はあくまでも非公認のものなのだ。政府が本格的に推進しているものではない。世界ではリサイクル産業は4110億ドル産業だが、インドにはまさにこの分野で発展の可能性があるのだ。消費者向けの製品や、建築資材、紙などをより安価に提供でき、読み終えた新聞紙すら海外に輸出できる。インドや中国で特にゴミのリサイクル産業の発展の可能性がある。しかし、ゴミのリサイクル産業の現場は基本的に「汚い仕事」なのだ。働いている人の健康を害することもあるし、職場は悪臭や汚れがひどい。人権問題にも発展しかねない。こうした、発展の可能性のあるビジネスにともなうあらゆる問題を解決するには、こうしたビジネスを公的機関が積極的に支えなければならないと思われる。そうすれば、高い機械の導入も可能になるし、働いている人の職場環境も向上する。インドのグジャラート地方の港には船の解体作業所があるが、インド政府はこれを認めていない。もしここが公的に発展すれば日本ですらそこを利用するだろうとされている。現に日本政府もその方向で働きかけているのだ。この業界の安定化と環境問題をクリアーするためには、時間とお金と忍耐強さが必要なのだ。 フォーリンアフェアーズ「デリーからの手紙」

「オバマのダマスカスにおける選択肢」 シリアのアサドが民衆の暴動を暴力によって制圧している。このことが、トルコ・イラン・アメリカの関係を非常に複雑にした。オバマはこの地域のキーファクターをトルコのエルドガンだと考え、トルコと緊密に連携した。トルコは、アラブの春での民主化を支持して影響力を強めていたのだ。トルコは、しかし、「アサドは友人である」とし、体制を維持したままの改革を支持していた。ヒラリー国務長官は「アサドはすでに正統性を失っている」と発言したり「体制を維持したままの改革をすべきだ」などと態度を変えるしかなかった。トルコの中東政策は「問題のない中東」というものだった。それでありながら、シリア・イランとの緊密な関係を維持し、また、アメリカの仲介役を果たして影響力を強めようとしていた。しかし、トルコが、果たしてシリアの民衆と仲良くやれるのだろうかという問題があり、むしろ、シリアのアサドが退いたら「問題のない中東」ではなくなってしまう。また、アメリカが「シリアにおける暴動での死者」を最も批判しており、アメリカの意向にしたがうとイランがトルコに怒りを感じてしまうのだ。トルコはイランとの緊密な関係は生命線だ。アンカラ・テヘラン・ワシントンのトライアングルは非常に複雑化した。両立できないものが存在してしまったのだ。情報機関もかなり複雑に介入したが、結局、オバマはトルコを過大評価しすぎたことになった。この地域の強烈な力はトルコにはなかった。アメリカだけが何らかの対応を取れる国だったのだ。 フォーリンアフェアーズ「オバマのダマスカスへのオプション」

「リビアの反乱軍は持ちこたえられるか」 リビアのカダフィがトリポリにいまだ存在し、忠誠を誓う者たちはいるが、確実に資金力を失って行っている。しかし、反乱軍もベンガジで6か月間対峙している。オバマは何らかの軍事行動をとる条件に、財政的な理由から「数日間だ。数週間ではダメだ」と言っている。反乱軍はあまりにも長い時間をかけすぎたのだ。彼らの不利な点は法制度が整っていないことだ。今、リビアに必要なのは、将来の展望を示せる政権であることと、指導者としての人物像を示せる人だ。そもそも、カダフィ政権の強権的手法から反乱が起きているのだからもとの体制に戻ることはおそらくないだろう。しかし、トリポリの統治下にある地域の人たちは、新政権の法制度が不透明なため、自分たちの財産が保障されないという不安をもっている。反乱軍の指導者ですでに暗殺されたものがおり、先日葬儀が行われた。新政権でも指導的立場に立つのは部族間での思惑から命がかかることになる。シナリオとしては、カダフィやその側近を国外に逃がして、新政権で統一することだろうが、これは、革命での勝利であるものの、旧体制派との共存という事実上の敗北を意味する。中立派や周辺国の動向という予測不能な事態を待ちながら、双方ともに力を落として行っているのが今のリビア情勢なのだ。 フォーリンアフェアーズ「反乱軍は持ちこたえられるか」

「EUの政治的統合のジレンマ」 ドイツのメルケルと、フランスのサルコジがユーロゾーンサミットで、イタリアとスペインの国債問題について話し合った。そこでは、ヨーロッパ中央銀行が公債を発行できるようにしたらどうかということが話し合われた。EUは現在、二つの選択肢が求められている。「政治的統合をさらに強化するか」という選択肢と、「12年かけて構築した統合通貨を解消するか」という選択肢だ。イタリアとスペインの財政問題は、今までの対応とは規模が異なる。大事なのは、一番経済力が強いとされるドイツがヨーロッパ中央銀行を辛抱強く支え続けることと、マーケットの投資家のマインドが債券市場から離れないように気を付けることだとされる。ドイツがカギを握っているのだ。イタリアは緊縮財政を政策として打ち出したが、この国はそもそも構造改革が求められていて、競争力を強化しなければならない。雇用の柔軟性がないことなどが指摘されている。スペインも国内の金融不安を解消しなければならず、今までの対策で十分とは言えない。いずれにせよ、イタリアとスペインがEUやIMFに助けを求めてきたら、外部から明確な改革案を提示することにならざるを得ない。 フォーリンアフェアーズ「EUの政治的統合のジレンマ」

「米中関係の活発化」 アメリカのバイデン副大統領が、8月17日に中国を訪問し、次世代の中国の指導者である習近平と会談した。習近平は2012年に中国共産党のトップに立つことが予定されており、2013年3月には国家主席になる。バイデンの目的は、アメリカ経済が非常に安定していることを直接会って伝えることだったとされる。中国は1・2兆ドルのアメリカ国債を保有しており、これを市場に放出されると、それを吸収するだけの資金力を持ったファクターがいないことから、バイデンは「緊縮財政」と「景気回復」を強調した。一方、習近平は、アメリカの「大量消費型」の経済を戒め、「貯蓄に回したほうがいい」と発言した。これは、アメリカが貯蓄をするようになれば、他の国が輸入と消費という行動をとることから、中国経済にメリットがあるという分析のようだ。中国がなぜアメリカ国債を保有するのかという問題があるが、主要目的は「台湾に武器を売らせない」ことだとされる。また「極東地域においてアメリカの国益に反する行動へとアメリカを誘導することが可能である」と考えているとも言われる。あとは、貿易の自由化やサイバー攻撃撃退への協力などの話題で会談を終えている。なお、中国経済は現在まさに不動産バブルであり、金融機関の貸出残高が対GDP比で120%であることなどが指摘されている。この会談で、オバマ政権は「中国の覇権主義を痛感し、台湾に武器が必要であることを思い知った」とも言われている。 フォーリンアフェアーズ「米中関係の活発化」

 

「ヒズボラ:詐欺集団」 ヒズボラはレバノンが新政権を立ち上げて、この国での排除を決めたことから、生き残りをかけた闘争が始まった。スポンサーであるイランが経済が後退しており、シリアも政治的混乱にある。レバノンは軍事国家であり、4万発のロケットを保有する。国家を敵にすることの意味は大きい。ヒズボラは、それ以外にも犯罪行為を収入源にしている。クレジットカード詐欺やマネーロンダリングをはじめ、アメリカでもノースカロライナでタバコの密輸で150万ドルをもうけていたのが明らかになっている。ヒズボラは、巨大犯罪ネットワークを構築しており、一千万ドルを毎年稼いている。イランやシリアは資金を出すだけではなく、ヒズボラを政治ファクターとみなして訴追を行わないなどの対処もとってきた。イランが石油価格が高騰した時に2億ドルをヒズボラに流したため、ヒズボラはレバノンの破壊された町の再建に資金を投入してレバノンで支持を拡大した。選挙の時にはイランは6億ドルを流すこともあった。ヒズボラの政敵はサウジアラビアの支援を受けたスンニ派の勢力だった。2009年に石油価格が下落を始めた。イランでインフレが起こり、経済が停滞した。イランからヒズボラに流れる資金は40%減ったとイスラエルのインテリジェンスは分析している。ヒズボラは資金源を犯罪行為へと比重を移していったのだ。タリバンとの結びつきを強め、タリバンの麻薬取引にも関与するようになった。地対空ミサイルや、対戦車ミサイル、グリネードランチャー、AK-47、M-16、何でも売ったのだ。コロンビア、レバノン、パナマ、西アフリカ、どこででもビジネスを展開した。ヨーロッパ各国は、個別の犯罪には対応するが、ヒズボラを「テロ組織」とは認定していない。アルゼンチン・ブラジル・パラグアイの三か国が国境を接する地帯を巧みに利用して拘束を免れているとも言われ、アメリカはこの三か国に個別の犯罪で逮捕するという条件で、ヒズボラの資金源を断とうとしている。また、レバノン首相の暗殺でもヒズボラを追い詰めて行っているのだ。 フォーリンアフェアーズ「ヒズボラ:詐欺集団」

「ナイルのイスタンブール~エジプトがトルコの真似をできない理由」 エジプトでムバラク大統領が権力の座を失ってから、過渡的な軍事政権が樹立したが、中東においてうまく軍事政権を民主主義と共存させているトルコをモデルにしようという研究がなされた。しかし、民主主義を確立してアラブの春を支持し続けて存在感を高めたトルコと、エジプトの軍事政権では「本質が異なるのではないか」と指摘される。トルコは軍事政権を確立しているが、イスラム系・クルド系の活動家をうまく抑え込みながら、一方で、富を独占している同族企業を存続させたりしている。そもそも、法曹界の支持や、メディアの支持、その他の政治家の支持があるからトルコは軍事政権をうまく民主主義と調和させている。基本には、軍人には「ケマル・アタテュルクへの尊敬」があるから、支持が広がっているとされ、教育システムまで軍が掌握することが容認されている。エジプトではどうであろうか。軍は、農業・不動産・観光・航空・小売業・製造業、そしてもちろん軍事産業にまで関わっている。トルコのように「富をもっている人たちとのバランス」をまったく成立させていないのだ。また、トルコは憲法に軍の統治を組み込んでいるが、エジプトは、人民が憲法に軍の統治を組み込まなければ憲法上の正当化もできないとされる。それはもはや「統治」ではなく「支配」となってしまう。エジプトには、体制の変革に動いた様々な勢力がおり、軍に近いのはイスラムの人々だったとされる。しかし、イスラムを基盤にするにはあまりにも勢力が弱すぎるとされ、逆に他の勢力に基盤を広げることはイスラムの離反も招くことになる。トルコが今まで克服してきた、反体制勢力の抑え込みや経済問題の克服、暴力の鎮圧など多くのことを、今のエジプトの軍事政権に要求するのは不可能とされる。今のエジプトの先行きは非常に不安定かつ不透明となっているのが現状なのだ。 フォーリンアフェアーズ「ナイルのイスタンブール」

「戦時中のレイプの研究」 リビアのカダフィが、NATOの攻撃や内戦の過程で多くの女性がレイプされていると声明を出したことから、アメリカのヒラリーなどが激怒し、実際にアムネスティ・インターナショナルに統計を取らせて「そのような事実はない」と公表させた。しかし、戦時中のレイプというのはまさに人間を学ぶものであり、極端な数字ではコンゴでは2006年から2007年の間だけでも40万人の女性がレイプされているとされる。また、南アフリカでは「女性は文字を覚えるよりもレイプされる可能性の方がよっぽど高い」と報じるメディアもある。この「戦時中のレイプ」に関する問題は、とにかく「アンダーカウンティング」(数を少なく公表する)ことにある。被害者の女性自身が、羞恥心や、また愛国心などの理由で被害を泣き寝入りすることもあるし、場合によっては殺害されて「死亡者」に算入されるだけのこともあるのだ。こうした統計の取り方は「医療機関を調査するしかない」とも言われる。現在、コロンビアや、コードジボアール、コンゴ、東ティモール、リビア、スーダンでこのようなことが現在進行形で行われているのだ。こうした国々では「女性に統治機構に参加してもらうしかない」とも言われる。また、レイプは「外国の」「赤の他人」が被害を受けているのではなく、どの国でも、戦時中であれ平和な時であれ行われている。あなたの国が内戦になったら真っ先にレイプされると思ってこの問題を向き合ってもらいたいというのが「戦時中のレイプ」の問題なのだ。 フォーリンアフェアーズ「戦時中のレイプ」

「医学は文系学問~ハイチの事例」 1848年にルドルフ・ヴァーチョウが「医学は文系学問」と語ったのが有名であり、私の父もそれを口癖のように言っていた。その実態を、ハイチでの経験で生々しく語ったのがハーバード大学医学部卒のポール・ファーマーだった。彼は1982年にハイチを訪れた。当時の課題は結核であり、小さな診療所を作ることから始めた。しかし、医療施設への需要は大きく、すぐに中央病院にまで拡大したという。資金集めのために、世界でも福祉に影響力のある人をハイチに招待し、悪路を長時間歩かせてしまったこともあるが、おかげで2000年までにはハイチの町並みは見違えるほど変わった。また、子供の栄養不足が病気の原因であることもあり、ニジェールから輸入していたピーナツバターを、ハイチの農家に技術を教えて、自給できるようにもした。子供の栄養失調の防止にも奔走したのだ。また、腎臓にガンが見つかった少女がいたが、貧困層だったため、対処が遅れ、レントゲンで肺に転移したことが確認されたので、アメリカのボストンに転院させて放射線と薬物で対処している。このような事例にもバックアップする慈善団体の資金が必要になるのだ。2002年のブッシュ政権がハイチの救済に動いたので、一気に事態は改善したとされる。アメリカ大統領クラスがハイチの救済に動けば、巨大な資金が動く。そういう現状も政治だったのだ。政治力を最も必要としたのは2010年の巨大地震だった。病院の敷地に各国の医療使節団が縄張り争いをするぐらいの仮の施設を作ったが、むしろ有難いぐらいだったという。私はこの記事を読んで、東日本大震災で「医者は負傷者救済のための政治をやったのか?」という観点を指摘しておきたい。災害が起きるということはけが人が出るということだ。野球やサッカーで救済を訴える前に「医者が政治をやる」実態がなければならない。しかし、天皇はそのようなことを一切念頭に置いていない。頭の中の「事例集」に災害に関する事例が全くなかったようだ。 フォーリンアフェアーズ「仲間を助けること」

「アルカイダの真実」 トルコの言い伝えに「敵が蟻であれば象だと思って立ち向かえ」というのがあるが、今のアルカイダはまさに「蟻」でしかないのが真実なのだ。うまくセキュリティーをくぐり抜けた19名が9・11テロを起こした時は、「アルカイダはすぐに核兵器を開発するのではないか」と言われたが、実際のアルカイダは資金繰りに頭を悩ませつづけ、アメリカに小型爆弾を持ち込もうとしては失敗していた。ロンドンの地下鉄で2005年に爆破テロを成功させたのが唯一の実績だった。ビンラディンはパキスタンですでに殺害されており、テロ組織としての「恐怖」は日本のオウム真理教の方が上だったのではないかとすら言われている。オウム真理教は、オーストラリアからウランを持ち込んで核開発を行っていた。しかし、問題の困難さを実感し、サリンの開発に移行している。実行したのは地下鉄サリン事件の13名の殺害だけだ。アルカイダも、アメリカの識者がしきりに「核開発の可能性」を喧伝したことから、人々に脅威が広がったが、核開発のための施設も科学者も技術者も保有する力がなかったのだ。ましてや核実験までは到底及ばない。たしかに、アルカイダというのは国際社会においてはいまだにテロリストとして脅威を与える存在ではあるが、結局のところ「オウム真理教にも及ばない蟻」とまで言われている。 フォーリンアフェアーズ「アルカイダの真実」

「ムバラク裁判とその行方」 エジプトのムバラク大統領が一月に権力の座を奪われたが、彼が8月3日に最初の裁判を迎えた。彼は警官にデモ隊への発砲を命じ、多くの命を奪わせている。それだけではない、いろいろな汚職まで法廷ではさばかれる予定だ。イスラエルに市場価値よりはるかに低い価格で石油を流していたり、他にも多くの争点があるとされる。閣僚も被告人として名を連ねている。しかし、現在の政権が、今年の年末の選挙までの暫定政権として軍が握っているのが問題だ。エジプトの司法は独立性が高いとされるが、多くの政権に近い人は「自分たちは牢屋に入りたくない」と考えており、警察からも「どうやって証拠を集めるつもりか」という問題がある。群衆に誰が発砲したかなどの問題は警察しか把握しておらず、証拠という観点からも警察に切り込むのは難しい。現在の軍事政権は「裁判とは距離を置きたい」と考えている。エジプトの民衆は、デモで息子や娘の命を奪われた人も含めて、かつての権力者が被告人に名を連ねていることそのものに満足しているとされる。ムバラク自身が権力を握っていた当時に、忠誠心のない部下を裁判にかけるなど、エジプト司法は信頼が厚いが、革命の過渡期にかつての権力者が裁かれるということであり、今のエジプトは経済問題の克服を課題としていて、今年の年末の選挙に人々の関心は移っているとされている。 フォーリンアフェアーズ「ムバラク裁判と困難」

「中国と特許の壁」 あなたのDVDプレーヤーの裏を見てみればわかるが、たいてい"Made in China"と書いてある。しかし、これらの技術はほとんどがアメリカや日本にあるので、中国は製造業の利益の半分をアメリカや日本に特許料として支払っている。しかし、現在の、原料価格高騰や、資源不足、人件費の値上がりを考えると、もはや中国は独自の技術開発をしなければ経済発展はないとされる。いままでは「トップダウン式」によって、巨大プロジェクトや、ナノテクノロジー研究、バイオテクノロジー研究、薬品開発を行うことができたが、これから独自の技術を開発するためには「ボトムアップ式」に切り替えることが政府レベルでも共有された考え方だ。中国は、技術の海外依存度を、21世紀の中ごろまでに現在の5割から3割までに減らす計画を立てている。また、国際社会に受け入れられるためには海賊版の規制も行わなければならない。中国も、最大の輸出国として知的財産の分野ではアメリカに妥協する方向を示しているが、官僚主義の支配するこの中国の今後を不安視するアメリカの政府関係者もいる。中国が西側諸国と透明性のある知的財産をめぐる仕組みの構築をしてくれれば、薬品開発の分野一つとっても人々の健康のためにプラスになるのだ。そのような仕組みの構築が望まれているところだ。「ディズニーランドは遠すぎる」などといって海賊版を作っているようではダメだということはもはや中国も認識しているのだ。 フォーリンアフェアーズ「中国と知的財産の壁」

「今、ドイツが強い」 ドイツが、製造業が好調で、中国に次ぐ世界で二番目の輸出国になった。東ドイツの統合後、ようやくドイツの経済が活況を呈し始めたのだ。アメリカが2007年から2011年の間に失業率が4・6%から9・0%になったのに対し、ドイツは8・5%から7・1%へと減っている。失業者も300万人を割ったのだ。輸出産業のドイツ経済に占める割合は三分の二にもおよび、今、ヨーロッパでもっとも経済力を充実させている国だと言える。 フォーリンアフェアーズ「ドイツの成功の秘密」

「アメリカ軍のリビア攻撃」 今年の4月にアメリカ軍は「アフリコム」というアフリカ遠征部隊を編成し、リビアにトマホークミサイルを110発を撃ち込むなどの「オデッセイの夜明け作戦」を展開した。しかし、北アフリカや、ソマリアのアルカイダの強烈な反発を受け、テロの報復の可能性が出てしまったのだ。ゲーツ国防長官は、そのためにイラクを訪問して事態の鎮静化を図ろうとしたが、この「オデッセイの夜明け作戦」がどのような結果をもたらすかは分からないのだ。 フォーリンアフェアーズ「アフリコムのリビア遠征」

「アフリカ周辺の海賊対策」 ナイジェリア沖で、商船が海賊に拘束され、フランス人船員やタイ人の船員が拘束される事件が起き、オバマ大統領が、アフリカの海賊対策の政策を発表した。世界の物資の流通の90%が海を通じて行われており、しかし、アフリカは利益の3%にも満たない。これは、アフリカの政治が海の可能性に無関心だったことが背景にあり、オバマは、アフリカの人件費の安さや物価の安さ、市場としての可能性などの潜在能力があるとし、港湾を整備して、海洋法を周知させれば、海賊にも仕事が与えられ、アフリカ周辺の安全の確保にもつながるのではないかと考えたのだ。アフリカの海の治安は悪く、沖の石油パイプラインから石油を盗んだり、漁船の違法操業、麻薬の密売などが行われるなど、問題は海賊にはとどまらないのだ。これらの問題も、アフリカの港湾整備、海洋法整備などを推進することでビジネスによる富を与えれば解決するとされ、国連やアメリカ、アフリカ連合などとともに、アフリカ海洋発展イニシアチブを立ち上げたところである。 フォーリンアフェアーズ「海賊から商業への転換」

「ドイツの移民問題の葛藤」 どの国も、自国の経済発展のために、高度な技術をもち高い教育を受けた外国人が必要であるという点には変わりはない。しかし、ドイツの移民問題を扱った著書「ドイツはドイツであることをやめるのか」という本がずっとベストセラーの地位を維持しているのだ。著者であるサラジン氏ががベルリンの財務担当であり、中央銀行のメンバーであることから、この本を一概に無視するわけにはいかないのだ。この本ではユダヤ人の「遺伝子」という言葉を使用したことから、サラジン氏は中道左派から追い出されてしまった。中道右派も態度を決めかねている。この著書の「多文化の共存政策は完全に失敗した」という見解に、ウルフ大統領もメルケル首相も批判的である。キリスト教民主同盟もこの著書を批判した。唯一、キリスト教社会同盟だけがこの著書を支持し「移民など必要ない」という見解に立っている。経済の発展のための労働力という見地と、民族統合政策は失敗だったのか、という指摘、その中で、著名な人物が書いた「移民の排斥」の論陣がベストセラーになり、しかし政治の現場からは批判が多い、という構図だろうか。 フォーリンアフェアーズ「ドイツの移民問題の葛藤」

「ヨーロッパユーロの守り方」 ヨーロッパ経済は、政治的失敗から危機に陥ることが多い。17か国からなるEUで1998年から通貨統合がなされたが、すべての国が同じ経済の安定性をもっているという前提がすでに壊れているため、もはやEUの拡大は困難になっているのだ。たとえば、ギリシャでは虚偽の財政に関する情報を公表したり、アイルランドも不安定な財政をもっていたりして、もはやドイツのような経済の安定性は持っていない。このことから、ヨーロッパ財政安定機構を設けて、今後数か月でギリシャは500億~1000億ユーロを受け取るとされ、これがもしスペインにまで波及したら6000億ユーロにまで達することが見込まれている。ヨーロッパ財政安定機構は7500億ユーロまでしかもっておらず、ポルトガル・アイルランド・ギリシャ・スペイン(PIGS)のすべての国の面倒は見れない。機構にはイギリスやフランス・ドイツなどの銀行が出資しているが、債券市場の安定というメリットがあるからお金を出しているのであって、不安定な財政を抱えた国をEUの領域内に抱え込むことは、EUの拡大がこれ以上は難しいことを端的に示している。 フォーリンアフェアーズ「ヨーロッパユーロの守り方~そしてEU」

「サウジアラビアとイエメンのジレンマ」 イエメンはアラブ諸国でも人口の多い国で2千4百万人が居住している。この国は部族単位で構成されているため、非常に政治は複雑に動いている。サウジアラビアのイエメン政策は「弱い国と位置付け、影響力を持つ」ということだった。しかし、若者がストリートで政治運動を始めたのだ。サレハ大統領は王宮の攻撃を受けて負傷してしまった。この複雑な政治体制をもつ国でサレハの入院は、民主化運動を激化させ、もし、サレハがこの地に復帰したら激しい内戦になるのは目に見えている。サウジアラビアは、王族による支配が行われていて、バーレーンの民主化にすら体制不安が起きているのだ。もし、イエメンで民主化が行われれば、サウジアラビアの体制はますます不安定になる。しかし、もはやサレハを支持することは自国の利益にならないのではないかと言われている。複雑な部族体制をとる国に単純に資金を流すというシステムではもはやサウジアラビアは影響力を行使できない。しかし、いろいろと反体制勢力を分析してみても、共和主義への移行しか選択肢はないことが明らかになり、サウジアラビアは自国の王朝支配を守るために、イエメンへの「影響力の維持と安定化」を守る手段があまりにも不透明となってしまった。医療支援を求めてきたサレハをこの地に戻すのか、それとも新たな体制に影響力を持つのか、サウジアラビアはイエメン政策で非常に困難な局面を迎えている。 フォーリンアフェアーズ「サウジアラビアとイエメンのジレンマ」

「トビリシの統治エリート」 ロシアの一部に「コーカサス地方」というのがある。山で隔てられた地域である。北部にはオセチアがあり、南部にはグルジア・アゼルバイジャン・アルメニアなどがある。北部のオセチアはロシアが領有しており、今まで、南部のグルジアと北部は二度、戦火にまみれている。旧ソ連時代に一度争っており、二度目はグルジアにロシア軍が介入し、グルジアは領土の20%を失ってしまった。ロシアはコーカサス地方を「18世紀以来の友人」と説明しているが、コーカサスの人々は「1801年から支配下に置かれた」と考えているのだ。二度目にグルジアがロシアと武力衝突した時に、グルジアはNATOやアメリカが「もはや助けてくれない」ということを悟り、西洋諸国よりも近くの友人を見る、という作戦に切り替えたとされる。つまり、イランであったりトルコであったりを重視し、「コーカサス連合」と銘打って、この地域の連帯を主導しているのだ。このことは端的に、北部コーカサスの人々にグルジアへの親族を訪問したり交易をしたりするのにビザを免除したことに現れた。今までは北部の人は、全く違う方向であるモスクワまで飛行機で行って、グルジアへの査証を得なければグルジアへは入れなかったのだ。それが査証免除により「数時間のドライブ」で往来が可能になった。中には、グルジアの安い車を買ってロシアで売る人まで出ている。専門家もこの政策には賛否が分かれており、「グルジアには中心になるだけの政策立案能力はない」とする人や、「いろんな民族がいる以上、すべての民族が自分たちの土地を求め始める。第二の中東になるだけだ」という人もいる。今後の「グルジアのトビリシ統治エリート」の力量を拝見したいものである。 フォーリンアフェアーズ「トビリシからの手紙~コーカサス連合へ」

「アメリカの財政事情」 現在のアメリカの国家財政と2050年を比較してみよう。軍事予算はGDPの5%から6%に若干増えるだけだとされている。しかし、高齢者医療・障害者・低所得者医療は5%から12%に増加するとされる。つまり、アメリカの国家財政は医療保険制度の行方に左右されるのだ。いまのところ、オバマ政権は正しい方向を向いているとされている。しかし、教育への投資が医療保険制度へ向けられたため、公立大学の教員の給与が私立大学の教員の給与に比べて10%~20%低くなったことは広く知られている。アメリカの国家財政の強さは世界に影響を与える。それが、医療保険制度にかかっているのだから「福祉」もきれいごとではない。国家全体を覆う制度を作るにはアメリカにはあまりにも「リスクの高い地域・集団」と「リスクの低い地域・集団」の格差がありすぎるとされる。これが、アメリカの医療保険制度のもっとも難しい点であり、アメリカの将来だけではなく、世界に影響を与える問題となっている。 フォーリンアフェアーズ「健康保険はどのようにアメリカに影響を与えるか」

「オバマは戦争に学んでいる」 アメリカの大統領の政策決定の手法には、3つほどの選択肢を首脳が用意する方法と、さまざまな利害関係者を交えて方針を一本化する方法がある。選択肢を示す方法は、たとえば1953年にアイゼンハワーが対ソ連政策で、複数の選択肢を周囲に提示させて、急進的ではないが、敵対する方向性を示したことで知られる。この政策はその後40年間続いたわけであるから有効だったとされる。しかし、この「複数の選択肢」で政策を練り上げる手法は、最終決定に反対した人がいろんな情報をリークしてしまう弱点があるとされる。「私は異なる考えであった」ということから始まり、政策決定プロセスまでリークしてしまう人がいるのだ。逆に、コンセンサスを作り上げていく手法があるが、2006年にブッシュ大統領が何か月もかけて、対イラク政策でとった手法だ。イラクの首相の意見すら聞いている。しかし、ブッシュの方法はこの時は、さらなる追加派兵を求められることになり、あまりうまくはいかなかった。この、コンセンサスを作り上げる手法は、「サプライズ」を引き起こすことがあるとされる。自分の意見を聞いたはずなのにまったく最終決定に反映されていないではないか、という現象をいろいろな当事者に引き起こすのだ。どちらの方法もメリット・デメリットがあることが分かる。さて、オバマ大統領は、アフガニスタン政策においては2009年に政策決定を求められ、複数の選択肢を示す方法をとった。「まったく追加派兵をしない」「3万人の増派」「5万人の増派」の3つのうち、オバマは真ん中を選択している。この時に、アフガニスタンの指揮をしていたマックリスタルは「私は5万人を要求していた」といい、バイデン副大統領は「追加派兵をしないように主張した」ということをいろんなところでリークしている。このようなことをオバマはアフガニスタン戦争で目の当たりにしているのだ。さて、2011年7月に撤退を開始することになっていたアフガニスタンであるが、オバマは実は新たな思考法を採用し始めたのではないかとされている。アフガニスタンのカルザイと6月にビデオリンク式の対話を行っているのだ。オバマは戦争で学習しており今月からの撤退をどのように処理するのかが注目される。 フォーリンアフェアーズ「アフガニスタンでの合意」

「アメリカ・ヨーロッパの経済危機が中国の軍事力を強くする」 中国は、膨大なドル資産を保有しているが、アメリカが、軍事転用可能な航空宇宙技術や、その他の多目的テクノロジー技術の売却を禁じてしまった。そもそも、2008年のアメリカの経済危機は、ゼロ金利時代に、いかに有効な投資技術を生み出すかという観点から様々な技術が生み出されて、その代表例がCDSであった。しかし、これがアメリカ発の金融危機の引き金になった時に、アメリカが中国の「技術の買い漁り」を禁じたのだ。今回、2011年のヨーロッパの経済不安はギリシャで端的に表面化したが、財政危機を乗り越える手段は基本的に四つしかない。「インフレ・債務圧縮・デフォルト・デフレ」である。それぞれ複雑なメカニズムがあるがこの四つしかないのだ。中国はギリシャの国債の半分を2200億ドルで買い叩こうとしたのだ。それも、ヨーロッパに影響力をもち、ヨーロッパのさまざまな軍事転用可能な技術を買い漁ることが目的だとされる。アメリカやヨーロッパの経済不安は、中国の軍事力を強めるという思わぬ効果をもたらすという視点が存在するのだ。 フォーリンアフェアーズ「中国のヨーロッパ買い叩き」

「ノルウェーのイスラム教徒」 もともとは1960年代後半にモロッコやパキスタン、トルコなどから移民がノルウェーに来るようになったのが始まりだ。ヨーロッパ各国は国益を見据えて積極的に招いたのに対して、ノルウェーには自然に集まった。1975年にノルウェーは移民を禁止しているが、すでにいる家族との同居を求めたり政治難民などを理由に受け入れつづけ、1990年代には湾岸戦争やバルカン半島での紛争を背景にその数を増やした。イスラムそのものも多様であるが、ノルウェーでは多くが中産階級かその下に位置し、しかし、高い教育を受けることに恵まれている。10万人のイスラム教徒がおり、100のモスクがある。それぞれのマイノリティーが良好な関係を保っている。1987年には、カール一世がイスラム組織を選挙で総動員して勝利を収めるなど、政治的な存在感を示したこともあるのだ。しかし、湾岸戦争やバルカン半島での紛争などがあるたびに、ノルウェー国内でもイスラム教徒の立場は微妙なものとなっていった。9・11テロの時には「セキュリティーの問題」から、銀行の清掃員をやっていたイスラム教徒が解雇されている。ブレイヴィクは、そのような中で、反イスラムのネットコミュニティーで再三コメントをしていた。しかし、周囲の反応は「暴力はやめろ」という風潮だったという。そこで、ブレイヴィクは行動に出ている。与党労働党のユースキャンプが行われていて、イスラム居住区がある場所で多くの人を殺害している。ノルウェーの「多文化共生社会」は失敗だったのかという風潮がこの事件で生じたが、政府や議会は積極的にマイノリティーとの対話を進めていく方向を現在は向いているようだ。 フォーリンアフェアーズ「ノルウェーのイスラム教徒」

「北朝鮮の戦術はもはや予測可能」 北朝鮮は、金日成の時代から、経済発展をした韓国と対等に戦うためには、国際社会しか頼るものがなかったが、国家そのものが、中国・ロシア・日本・韓国・アメリカが向き合う「中立地帯」に位置することを最大限に活用するという戦術をとり、それが大成功してきた歴史だったことが明らかになっている。基本的に「外部に敵を作り」「国内の反動分子を粛清する」方針を北朝鮮はとっており、オバマ政権は、北朝鮮の「確立した」外交戦術を見透かして「戦術的忍耐強さ」という政策をとったところ、これが見事に機能したのだ。歴史を振り返ってみると、北朝鮮は、公海上で拿捕したアメリカ艦船の兵士を殺害し、拷問して11か月後に釈放するなどして、常にアメリカを怒らせることを考えていたのだ。このことで北朝鮮は「得をする」ことを学習してきたのだ。アメリカがベトナム戦争で苦しんでいては、その隙を突き、イラク戦争で苦しんでいては同じことを繰り返す。それが孤立した国家にできることだったのだ。ブッシュ政権はこれに耐えかねて、経済制裁を緩和し、テロ支援国家の指定も解除してしまった。しかし、アメリカ側は着実に「データ」をとり続けていたのだ。アメリカがリーマンショックに陥った時も、核やミサイルでしきりにアメリカを怒らせようとした。また、北朝鮮の観光地を歩いていたアメリカ人すら殺してしまった。しかし、オバマ政権が「戦術的忍耐強さ」という政策をとり始めてから、北朝鮮の「王朝マネー」が一気に収縮し、北朝鮮での処刑の数も減ったのだ。北朝鮮が「人権」というものを考え始めた。今や、ゲームの主導権は北朝鮮にはなく、アメリカが握っていることが明らかになったのだ。金正日はすでに心臓麻痺を起こしたこともあり、もはや、その命運も「かつてのソ連」とまで言われている。ゲームはデータがすべてだったのだろうか。情報源:フォーリンアフェアーズ「平壌プレーブック」

「中国の膨張は戦争につながるのか?」 中国の膨張が21世紀の国際社会の最も重要なテーマになることは間違いない。しかし、これがどのような結果をもたらすのかは見解の相違がある。今まで、「膨張する」と言われた国は日本やEUも含めて、理想論に終わっており、中国もその一つの加わるに過ぎないとする見解もある。しかし、中国の膨張は、地政学・経済学・歴史学などの観点から盛んに議論されている。もし、米ソの冷戦のようになるのなら、地政学的には中国は非常に恵まれた位置にあるとされる。一方で、中国の今までの経緯を考えると、アメリカを中心とした秩序に組み込まれる形でむしろ周辺国にも繁栄をもたらすのではないかとも言われる。しかし、冷静に分析している人は、中国は東シナ海・南シナ海で非常に攻撃的であり、それを、アメリカとインドの連携で包囲している現状がある点を指摘する。いずれにせよ、中国の膨張がどのような形でエンディングを迎えるのかは、今のところ専門家でも見解が分かれているのである。 フォーリンアフェアーズ「中国の膨張は戦争につながるのか?」

「ロシア~石油次第ではレーニン主義が生きていた」 アメリカとロシアは昨年、外交面での「仕切り直し」を宣言した。ロシアは出生率が1・5から2・1へと上昇し、中央アジアからの移民も多く、ウラル山脈の向うや極東ロシアも安定的に保持し続けるだろう。また、中国とも頻繁に交易をおこない、原油価格も1972年の1バレル=2ドルから、2010年の1バレル=150ドルになったことが経済の追い風になっている。しかし、もしソビエトが崩壊していなければ、この原油価格の値上がりはソビエトへの追い風になっていたはずであり、ゴルバチョフやエリツィンがいなくても、アンドロポフが国家に君臨していたことになる。この国がどんな体質をもっていようが、原油次第で国力が決まり、今後20年後の国家像が非常に見えにくい国であるとされる。 フォーリンアフェアーズ「モスクワの近代化のジレンマ」

「イスラエル~パレスチナ問題の難しさ」 オバマ政権はパレスチナ問題の解決を主要テーマにしてきたが、問題点が明らかになってきている。「東エルサレムやヨルダン川西岸地域をイスラエルがどうしても譲れない」という点に核心があるのだ。この地域を得るために今までどんな努力をしてきたのかという思いが強いのだ。これはシオニズムとも深いかかわりをもっている。また、イスラエル軍の今まで行ってきた破壊的行為が問題の解決を困難にしている。パレスチナの財産を破壊するだけでなく、略奪行為などを公然と行ってきたのだ。パレスチナとしても納得のいくものではなくなっている。かりに「パレスチナ国家」をこれらの地域に作ったとしても、いつ、イスラエルが侵略をするかもわからず、なかなか簡単には解決できない問題となっているのだ。イスラエル側も、テロで数千人の命を失っている紛争であり、そもそも新国家独立を容認できないという点が「東エルサレムへの思い」にあり、さらに、独立してもいつ侵略があるか分からないという問題があるのだ。シオニズムと東エルサレムの関係というのは理解しておいていいだろう。 フォーリンアフェアーズ「問題の解決にまとわりつくもの」

「レバノンの裁判とシリアの反撃」 2005年にレバノンのラフィク・ハリリ首相が爆弾により暗殺された。ハリリは「シリアのレバノンへの影響力を排除する」という政策をとっていたことから、当初から、ヒズボラとそれを支援するシリアが暗殺に関わっていることが疑われた。国連は国連憲章第7章の規定にしたがって特別法廷を設置し、真相の解明を行おうとした。ところが、法廷に関与する人々が次々に暗殺されていったのだ。法廷側は「ハリリ首相の葬儀はレバノンに一切関与させない」と発言し、シリアを追い詰めて行った。法廷に関与して殺された人も「ハリリ首相暗殺にともなう一連の犯行」とみなして法廷で裁くことを決定した。7か国が、ハリリ首相暗殺の背景を調査し、首謀者を特定しようと試みている。しかし、首相レベルの暗殺にはかなり高度なレベルの政治意志が関与していることは明らかであり、そのために法廷側も多くの命を失ったのだ。レバノンでは半数以上の人間が法廷側に非協力的であるとされ、だからと言って「劣ったレバノン国民」と呼ぶわけにはいかない。そのような困難を抱えながらも「首謀者の特定」こそが、レバノンという国家をいい方向に導くためのカギを握っているのだ。 フォーリンアフェアーズ「レバノン~裁判の日」

「トルコの成熟した外交政策」 トルコのエルドガン首相が7月に3選を果たし、声明を出した。「この勝利はトルコだけのものではなく、ベイルートの勝利であり、ダマスカスの勝利であり、サラエボの勝利であり、ラマラやナブルス、ジェニン、ヨルダン川西岸の勝利である」とした。これは、トルコの外交政策が中東の様々な地域に安定をもたらしている事実への自信を表明したものだ。トルコは非常に民主的で、住民の自治組織も進んでいる。アメリカすら「トルコの民主的な体制がなければ、もはや我々は中東では力が維持できない」とすら言っているのだ。今年の「アラブの春」において、トルコの外交政策は卓越していた。チュニジアにおいても、エジプトにおいても、アメリカが自国の利益だけを考えてダブルスタンダードがひんしゅくを買ったのに対して、トルコは「民主化」の側につくのが容易な体制をすでに構築していたのだ。そのため、各国の信頼を集めた。しかし、リビアにおいては、すでに莫大な投資をトルコが行っていたため、なかなかカダフィを批判しきれなかったとされる。しかし、リビア在住のトルコ人の引き上げが完了したら、たちまちリビアの民主化を支持している。トルコの外交政策は「問題のない中東」という政策だ。トルコには「クルド人の問題」というのが存在し、これは野党勢力でもあり、テロの温床でもある。シリアがクルド人を支援しているのだ。しかし、シリアでも民主化運動が起き、これをトルコが支援した。イスラエルの問題においてはパレスチナを支持しているとされる。中東では、世俗の権威主義と、イスラムの権威主義が争っているが、トルコのような民主的体制を目指すと公言する指導者もいて、現在のトルコは「かつてのオスマン帝国」とまで言われている。トルコは「問題のない中東」において通商を促進し、民主化の進んだ制度を基盤に外交力を高めることを政策としているのだ。現在の中東においては最も注目すべき国家であり、エルドガン首相は「この半世紀で最も人気のある首相」とまで言われている。 フォーリンアフェアーズ「トルコの成熟した外交政策」

「食品価格は変動幅の大きさが問題なのではない」 食料品の価格が現在、史上最高値を記録している。背景にはアジア圏での経済発展による需要の増加や、アメリカでのバイオ燃料の需要増加に加えて、オーストラリア・ロシア・南アメリカでの農作物の不作があるとされる。世界銀行のゼーリックや、フランスのサルコジなどは「価格の変動幅(ボラティリティー)が問題である」と指摘するが、これは的外れと言っていい。食料品価格の高騰は、貧しい人々を直撃するが、農家はむしろ豊かになる。しかし、変動幅が大きくなると、穀物メジャーが投資した分の回収が困難になるとされ、変動幅は貧困層にはあまり関係ない。変動幅が大きいだけならば、消費者は、別のメニューを選択すればいいだけであり、他の食品の高騰を眺めているだけでいい。ゼーリックもサルコジも「変動幅」には注目するが、「価格の高さ」には注目していないという点で完全な過ちを犯している。変動幅に注目すると、国家の政策も「農家への補助金・価格安定策・輸入禁止」などの誤った政策を誘発するとされる。今は、「価格の高さ」に注目して、世界で貧困層が4千4百万人増えたことに注目すべきであるとされる。「変動幅」が大きかった時代は過去に何度もあり、1970年代はもっとひどかった。「変動幅の大きさ」と「価格の高さ」は全く異なる概念なのである。 フォーリンアフェアーズ「食料品の変動幅がなぜ問題ではないのか」

「オバマは大局的な戦術をもっているか」 現在の不確実な時代には、オバマに何らかの「ドクトリン」を出すように求める声がある。そのほうがいろんな国々がそれに応じて行動できるというメリットがある。実際に、アメリカはそれがなかったために中東から明らかに後退している。シリアへの介入の際に「ドクトリン」が強く要請された。しかし、そんなに「ドクトリン」が必要であろうか。ブッシュ政権は「ネオコン」の連中が強烈なドクトリンをもっていたが、アメリカにはマイナスにしかならなかった。大事なのは、言葉に出すのではなく、心の中で「大局的な戦術」を考えておくことであり、それをさまざまなシグナルとして対外的に発信することだと思われる。心の中で考えておいてくれるだけで、アメリカ人は国内の人も国外の人も行動が容易になるのだ。 フォーリンアフェアーズ「オバマは大局的な戦術をもっているのか?」

「NATO~リビアで分かったこと」 NATOは金融危機以降、予算の削減を受けざるを得なかった。アフガニスタン戦争が「おそらく域外では最後の戦争」と言われていたが、リビアでの展開は全く予想外だった。しかし、予算の削減にもかかわらず、十分な力を保持していることを証明している。これはヨーロッパに非常に安定感をもたらした。また、爆撃機・戦闘機・艦船のみならず、偵察機や補給機の重要性が明らかになった。偵察機や補給機でどれだけ救われたかを実感したのだ。リビアへの軍事展開において、途中でカダフィが戦術を変えたため、NATOも「精密なピンポイント爆撃」に戦術を切り替えるのに成功している。今後のNATOは、地球規模でいろんなことが予測不能であることや、今後もさらに予算の削減を受けるであろうことも踏まえて、それでも現在の力量を保持し続けることができるかが問われている。 フォーリンアフェアーズ「リビア後のNATO」

「スーダンの現状」 今年の一月に、南スーダンで選挙が行われ、95%の投票率を記録した。2005年に停戦合意が行われてから、ようやく南スーダンは独立の方向へ動き出した。しかし、スーダンのアル・バシール大統領は非常に困難な立場に追い込まれた。今までは武器の調達もリビアのカダフィの支援で行えたが、今はチュニジア・エジプト・イエメンなどの周辺を世俗の政権をもつ国家に囲まれていて、イスラムを標榜するアル・バシールとは良好な関係にはない。何年か経てばこれらの周辺国もイスラム色を強めるだろうとされているが、時間が残っているかは分からないのだ。南スーダンは、スーダンの石油の80%を握っており、もし南が独立したら、北が崩壊するのではないかとも言われている。アル・バシール政権では腐敗が行われていたり、最近では軍幹部の粛清も行われた。南スーダンが独立しても決して地域は安定しないのではないかとされている。 フォーリンアフェアーズ「スーダンの斜陽」

「ペルーは左翼化するのか」 ペルーでウマラ氏が大統領選挙に勝ったことから、アメリカが神経をとがらせている。かつては毛沢東主義をとったこの国も、その後は、アメリカとの協調関係を維持して、豊富な鉱物資源を背景に、経済力を高め、経済成長率は6%と、南米では最も高い数字を維持している。貧困層も5割から3割まで減った。当然、この状況が大統領選挙でも維持されるものと思われたが、親米派がことごとく選挙の得票を得られなかった。人々は、経済成長は歓迎しつつも、腐敗や犯罪、大気汚染などの問題を重視しており、その改善を求めていたのだ。最後に残った候補者は、アルベルト・フジモリの娘であるケイコ・フジモリとウマラ氏だった。しかし、フジモリ元大統領も、インフラ整備などで国家に貢献したものの、権威主義や腐敗などが批判されていたのだ。ケイコは父親の人脈とのつながりが強すぎるとされて、一挙に攻勢に出たのがウマラ氏だった。ウマラ氏は、ブラジルのルラ大統領をモデルにすると公言し、赤いポロシャツに笑顔の宣伝ポスターをばらまいた。最後には3ポイント差で大統領選挙を勝ったのだ。このことが、南米に与える影響は大きいのだ。ペルーは、アメリカの次に中国との経済のつながりをもっており、ウマラ氏が大統領になってから最初に訪問した国はブラジルだった。中国は南米の各国とも結びつきは強く、中国の存在感がペルーの行方次第では高まることになる。このことから、アメリカはチャベス大統領とウマラ氏のつながりを分析したりして、ペルーが左翼化の道を進むのかを注視している。ウマラ氏はオバマ大統領とも良好な関係を築くとはしているが、汚職や犯罪、環境汚染などの問題も含めて、どこまで中国が南米に食い込むかは分からないのだ。 フォーリンアフェアーズ「ペルーは左翼化するのか?」

「今、ドイツが強い」 ドイツが、製造業が好調で、中国に次ぐ世界で二番目の輸出国になった。東ドイツの統合後、ようやくドイツの経済が活況を呈し始めたのだ。アメリカが2007年から2011年の間に失業率が4・6%から9・0%になったのに対し、ドイツは8・5%から7・1%へと減っている。失業者も300万人を割ったのだ。輸出産業のドイツ経済に占める割合は三分の二にもおよび、今、ヨーロッパでもっとも経済力を充実させている国だと言える。 フォーリンアフェアーズ「ドイツの成功の秘密」

« 演技の研究 | トップページ | 競馬の賭け方 »

スタンフォード哲学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 演技の研究 | トップページ | 競馬の賭け方 »