フォーリンアフェアーズ英語版~ダイジェストその10
「ハッカニはどのように勢力を増したのか」
アフガニスタンには、カイバル峠からのルートが知られているが、タリバンは南の方のクエッタをベースにアフガニスタンの出入り口を確保している。南に出入り口を確保しているから、アフガニスタンのカンダハルも掌握している。しかし、カブールの方の政治は極めて混沌としてしまったのだ。北部同盟のラバニ氏が暗殺されたことがきっかけだ。ラバニ氏を暗殺したのが、クエッタをベースにしたタリバンだとするならシナリオは簡単だ。調整役として影響力を強めようとしたラバニ氏をタリバンが消したことになる。しかし、パキスタンの情報部が「ハッカニネットワーク」を利用して消したという可能性が濃厚になったのだ。パキスタンがアフガニスタンの「調整役」を消したということはアメリカにとっても大きな裏切り行為であり、何らかの説明が求められる。さらに、パキスタンの情報部と密接なつながりがある「ハッカニ」とは何かという分析も当然必要になる。いわば「ファミリー」であるが、現在のアメリカの分析では、将来的にはファミリーの誰かがアフガニスタン統治の中央に出てくる可能性があるとされている。南部で強いタリバンに対して、カブールでパキスタンを背景に影響力を強めているファミリーであると位置づけられる。
フォーリンアフェアーズ「なぜワジリスタンでハッカニは影響力を強めたのか」
「ヨーロッパの極右の行方」
ヨーロッパではどの国でも「反イスラム」を標榜した政党があり、フランスではルペンが大統領の座すらうかがっているし、イタリアではムッソリーニの孫娘も政治活動をやっている。ノルウェーではブレイヴィクが「純粋な」ノルウェーを求めて大勢の人間を殺害した。デンマークでは中道右派政権が極右政党と手を組むまでに至っている。ヨーロッパでは、第二次世界大戦を終えて、平和と自由の名のもとに「他者を排除しない」というヨーロッパの空気を作ったが、同時に、1945年にローマに「ヨーロッパ社会運動」という名の極右活動が生まれていたのだ。それが現在、ヨーロッパで力をもつようになった。ヨーロッパの極右が用いる「反イスラム」のレトリックは「ヨーロッパの一番暗い時代」を理論の基盤にしているとも言われ、もっとリベラルで他者に寛大なヨーロッパの本質をもう一度見つめ直すべきだという意見が根強い。
フォーリンアフェアーズ「ヨーロッパの極右の将来」
「国連とパレスチナのサスペンスドラマ、今と昔」
第二次世界大戦でユダヤ人がどのような目に遭ったかは周知だろう。イスラエル建国と国連への加盟は1947年となっており、国連ができてからわずか二年後のことだった。1975年に、国連は「シオニズムはレイシズムに分類できるのではないか」という見解を出している。1988年にPLOのアラファト議長が「独立宣言」を出しているが、歴史的意義を語る人は今はいない。オスロ合意などでも独立が語られるたびに、イスラエルは「ユダヤ人入植」を推進してきたのであり、1967年の停戦ラインというのはあるものの、そのラインの向うの7割をイスラエルが実効支配してしまっている。この停戦ラインでの独立はもはやまとまらない話であり、また、東エルサレムという「妥協の余地のない地域」をパレスチナが保持していることも、解決を困難にしている。そんな中で、パレスチナは国連での「完全な資格」(フルメンバーシップ)を求めたのだ。国連にいったい何ができるのかという意味では、パレスチナも懐疑的であるとされるが、不当な侵略などの国際法違反にはそれなりに役割を果たしてきたとされていて、少しでも物事を前進させるために、パレスチナはフルメンバーシップを求めているのだろうと説明されている。
フォーリンアフェアーズ「パレスチナと国連のサスペンスドラマ」
「なぜイスラエルはパレスチナ独立に投票すべきか」
パレスチナが、国連での「メンバーではない国家」としての承認の投票を年次総会に求めている。アメリカは拒否権を使って総会にかけるのを拒否しようとしているが、総会では140もの国家が「二つの国家という解決法」に合意しているとされる。解決法の基本は2000年にクリントンが示し、2011年にオバマが発展させた「1967年の停戦ラインでいったん合意したのちに、適正な領土の交換を行う」というものが現在示されている。これは到底イスラエルには容認できるものではないのだ。東エルサレムをパレスチナがもっているため、「西の壁」などの要所をパレスチナが「領土の交換」でどんな条件でも突きつけることができることになる。国際社会で140か国もの国家が「二つの国家という解決法」を支持してしまうことはイスラエルとしてはどうしても避けたいとされる。アラブ革命で、エジプトやシリアが体制不安にさらされたために、イスラエルが「シナイ半島やイスラエルの北部」で何らかの軍事行動を起こすことが懸念されているとされ、国際社会が、イスラエルにも「国連総会での投票に応じるべきだ」としているのだ。
フォーリンアフェアーズ「なぜイスラエルはパレスチナの独立に投票すべきか」
「リヤドとテヘラン~二つのライバル」
サウジアラビアはスンニ派の庇護者を自認し、イランはシーア派を自認している。この二つの国家は仲間でもあり、ライバルでもある。ともに、同じぐらいの石油・天然ガスの埋蔵量を誇る。このオイルマネーを背景にした二つの国家が中東を面白くしているのだ。サウジアラビアはイランの三分の一しか人口がないため、イランよりも人々は豊かであり、また、イランは核問題でアメリカの制裁を受けている。サウジアラビアは「石油の増産をして石油の価格を下げる」という戦術をとったら、もはや石油の増産が不可能となっていたイランの経済を直撃している。しかし、イランも負けてはいなかった。サウジアラビアの兄弟国であるバーレーンで暴動が起きたら、バーレーンがスンニ派が支配層であるものの、国民はシーア派が多数派であることから、サウジアラビアとは16マイルしか離れていないこの地への影響力を増そうと工作したのだ。しかし、軍を送るまでには至らなかった。また、イラクにおいても、シーア派の影響力を増すことにイランは成功しており、経済では劣勢に立ちながらも、政治的にはイランが勝っているのではないかとされている。また、レバノンの地においては、現政権はサウジアラビアの支援を受けた勢力が政権を維持しているが、イランはヒズボラを強烈に支援し続けている。この二つのライバル国家にアメリカがどのように関与するかが中東政策となっている。アラブ革命においては、イランは「イスラム勢力の目覚め」を期待したが、サウジアラビアにとっては革命は迷惑以外の何物でもなかった。アメリカは、パーレビ国王の追放以来、イランとは対立関係にあるとされるが、方程式のようにサウジアラビアを支持しているわけではない。非常に複雑な外交戦術をとっている。イランが核兵器を保有したら、イランが軍事的には一歩リードするのは間違いない。しかし、サウジアラビアもすぐにパキスタンの支援を受けて核をもつだろうとされている。そのために、イランの核問題は核不拡散の見地からも重要な問題となっているのだ。
フォーリンアフェアーズ「イランとサウジアラビアのライバル関係」
「イランの海への進出」
イランでは、現在、軍が二つの系統に分かれている。共和国の軍と革命の流れを受けた軍である。つい最近まで軍の船舶を三隻しかもたなかったが、現在は11隻、二年後には20隻にまで増やす予定だ。イランは2025年までに海軍の影響力をペルシャ湾のみならず、紅海からマラッカまで拡張するとしており、最近はしばしばアメリカ第五艦隊に船舶を寄せたりして、挑発的行動をとっている。ペルシャ湾をアメリカ第五艦隊が守っているのは周知だろうが、イランもようやく海に目を向けるようになったのだ。イラン・イラク戦争では45万人の地上部隊がいたが、「海」では案外貧弱だったのがイランなのだ。しかし、アメリカも「イラン海軍は念頭に置かなければならないだろう」としているようだ。
フォーリンアフェアーズ「イラン海軍のペルシャ湾での脅威」
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