フォーリンアフェアーズ英語版~ダイジェストその8
「バーレーンの民主化とアメリカ」
アメリカはアラブの春に対しては「歴史的に正しい側につく」としているが、バーレーンに対しては非常に難しい立場にある。バーレーンは国王もカリファ一族で構成されており、非公選の首相も1971年から40年にわたって世界最長の任期を誇る首相をこの一族から出している。バーレーンの重要性は、アメリカと緊密な関係にあり、地政学的に湾岸の要衝にあることから、アメリカの第五艦隊がバーレーンに駐留し、湾岸の輸送ルートを守っていることにある。この輸送ルートの安全は西側諸国のすべてに恩恵をもたらしている。しかし、王政が抑圧的であり、腐敗していることから、民衆が体制の変革を求めた。この体制の変革はサウジアラビアをも直撃しかねない。サウジアラビアは、エジプトの民主化をアメリカが支持したことさえも「裏切り」とみなしていたのだ。カリファ一族には西側諸国で教育を受けた41歳の皇太子がいるが、この皇太子が、反政府グループとの妥協を模索しているのだ。首相を公選にしたり、議会を作ったりする妥協案を提示している。そうなると、アメリカは反政府勢力との連携の可能性も分析しなければならなくなる。このことから、この皇太子の対応がどこまで本気かは「投獄中の政治犯釈放」が試金石になるとされ、アメリカは第五艦隊の移転も視野に入れて、バーレーンの行方を見守っているのだ。バーレーンの民衆も、抑圧的体制が続くのなら第五艦隊すら必要ないと考えるまでに至っている。湾岸の石油の輸送と深くかかわった問題だ。
フォーリンアフェアーズ「バーレーンの民主化とアメリカ」
「市民社会とテロとの戦い~頭のいい対応」
イスラムがテロを起こす可能性は10年前に比べて著しく減少したのは事実だ。パキスタンで活動している主要な連中よりも、今となってはハリウッドで映画を作っている連中の数の方がはるかに多い。それでも、ニューヨークのマジソンスクエアガーデンでの自動車爆破未遂事件や地下鉄爆破未遂事件が大きく報道されている。平和な市民社会ほどセンセーションにこのようなものに反応し、テロリストを喜ばせている。安全すぎる社会は危ういものなのだ。危険を一定のレベルに維持する社会が一番いい。交通事故が起きたり、いろんな事故が必然的に起きるのが普通の社会だ。そういう「一定のレベルに危険を維持する」のがテロとの戦いに必要なのだ。
フォーリンアフェアーズ「市民社会と、テロ対策、情報戦」
「ボコ・ハラームへの対策は武器を使わないこと」
ナイジェリアの北部のイスラムを拠点にするテロリストグループ、ボコ・ハラームは8月26日に国連ビルに自動車を突入させて爆破させ23名を殺害した。この組織への対策に、アメリカや英国・イスラエルが動いたが、ボコ・ハラームを分析してみると、北部の貧困や腐敗を標的にしたムーヴメントであり、ブログも一週間以上更新されていない。イスラム国家の樹立を求める原理主義だが、その対策は、武器によって行うよりも、政治的・外交的手段によって行ったほうが有効であるとアメリカは考えている。そのために、西洋の科学を否定する連中にアメリカは、彼らのイスラムの伝統に根ざしつつも適切な教育を与える学校を各地につくるなどの対応を取り始めた。ナイジェリア北部にはすでに7千5百万人のイスラムがいて、これはアフリカのイスラム集団としては最大規模だ。これらの連中を力でコントロールすることはナイジェリア政府にもワシントンにも不可能だ。そのために、政治的・外交的な手法で彼らの運動の本質を分析し、危険な方向に向かわないように誘導するという対応をとっているのだ。
フォーリンアフェアーズ「ボコ・ハラームと戦うのに武器は必要ない」
「朝鮮半島の今」
朝鮮半島は今、どうなっているだろうか。韓国は経済発展が著しく、情報化、グローバリゼーション、民主化の波に乗った。そしてG-8の国以外で初めてG-20のホスト国を務めるまでに至っている。一方、北朝鮮は、核拡散の脅威であり、2010年11月には、朝鮮戦争終結以来初めて、韓国領内に軍が侵入し、軍人や民間人を殺害している。両国の動向は非常に対照的で、そのため、周辺国は、より大胆で柔軟な対応がとれるようになったと言える。この朝鮮半島の二つのライバル国家は、アジアの安全保障の主要テーマであり、周辺国もいろんな思惑をもって注視しているのだ。
フォーリンアフェアーズ「新しい朝鮮半島の地図」
「パレスチナの国連での一票と新国家の樹立」
パレスチナが今年の9月に国連で「メンバーではない国家」として国連の承認を得るという作戦に出た。これに対しては「あの地域を占領している国ではない国連を交渉相手にしてきた」と、その有効性を疑問視する声もある。オバマは1967年の休戦ラインを国境線とする主張に傾いているとされ、パレスチナの意向も同じだ。しかし、ガザ地区はパレスチナのハマスが占拠しているし、ヨルダン川西岸はパレスチナは40%しか掌握していない。ヨルダン川西岸は60%をイスラエルが制圧しているのだ。なによりも、東エルサレムの動向がシオニズムの問題から重要な争点となる。すべての地域を制圧していないのに独立を宣言すると、いつイスラエルの侵略が起きるか分からない。この地域は、中東の問題でもあり、世界の問題でもある。この地域をめぐって中東が動き、世界が動く。そういう地域で不安定な決着はつけられないのが現状なのだ。
フォーリンアフェアーズ「国連の票とパレスチナの新国家」
「ヨーロッパにとってのパレスチナ問題」
イスラエルとパレスチナの紛争に関しては、2009年にオバマがカイロでのスピーチで解決に向けて動くと宣言したが、オバマは1967年の停戦ラインを国境とするとしたことで、イスラエルはこれに激怒し、パレスチナは「オバマのせいで交渉は止まった」と判断している。今、アラブの連中は、事態を動かせるのはヨーロッパだけだと考えている。フランスやスペインの外相の動きに注目しているのだ。中東問題はヨーロッパの安全保障ともかかわっていることから、今はこの紛争の解決のキーはアメリカにはなくヨーロッパにしかないというのが、オバマの「1967年の停戦ライン」という発言のもたらした関係国の反応だったのだ。
フォーリンアフェアーズ「ヨーロッパにとってのパレスチナ問題」
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