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Foreign Affairs

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2010年11月

2010年11月26日 (金)

PTAやこども会の果たす保険の役割

Jurist(ジュリスト)2010年 12/1号 [雑誌]BookJurist(ジュリスト)2010年 12/1号 [雑誌]

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PTAは、従来からPTA活動中の災害や、学校の管理下における災害に関し、任意団体または民法法人として共済事業を行っていた。また、こども会(青少年教育団体)は、その活動中の災害に関し、民法法人として共済事業を行っており、児童生徒の健全育成及び学校における教育活動の円滑な展開に寄与してきた。つまり、地域のサッカークラブに入会するのにもあえて保険に加入する必要がない現状があった
しかし、このような、根拠法のない共済について、マルチ商法のケースがある、会員に対する情報開示がない、将来の保険金支払いに対する備えがないなどの様々な問題点が指摘されていたことから、平成17年の保険業法改正によりPTAなどが行ってきたいわゆる未認可の共済事業は、原則として平成20年4月以降行うことができなくなった。このような、PTA等の共済事業には保険業法の適用除外を望む声も多かった。しかし、適用除外は「顔の見える」範囲内で行われている事業に限られ、PTA共済(小・中学校600万人、高等学校150万人)、こども会(会員数500万人)を適用除外とすることは困難であった。また、保険会社となる方法も要件を満たすのが困難であった。
そのため、PTA等関係者をはじめ各政党や関係庁によって検討が行われ、法的な根拠をもって行政庁の監督の下、適切に運営する制度共済として立法化されることになり、平成22年5月14日にPTAや青少年教育団体が行っていた共済事業が法的な根拠をもって行えるような法律案が衆議院文部科学委員長提出の法律案として提出され、同月26日に成立した。6月2日に公布され、一年以内の政令の定める日に施行される。本法律の成立により、準備金などの要件を満たせば、PTA等は従来のように共済事業を行うことができるようになるが、細かい部分は政令にゆだねられている部分が大きく、適切に運用されていくことが期待されている。
ジュリスト2010年12月1日号「PTA共済等を制度共済として存続させるために」石引康裕

2010年11月21日 (日)

公共事業における「PFI」の使い方

Jurist(ジュリスト)2010年 11/15号 [雑誌]BookJurist(ジュリスト)2010年 11/15号 [雑誌]

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わが国においては平成11年に「民間資金などの活用による公共施設などの整備などの促進に関する法律」(PFI法)が成立し、公共施設整備や公共サービス提供の新しい手法としてPFI(Private Finance Initiative)が導入された。
PFI法はPFI推進委員会によってその運用や制度改革が検討されている。民間の資金だけでなく、経営能力、技術的能力を活用して公共施設などの整備等の促進をはかり、効率的かつ効果的な社会資本の整備、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を目指している。対象施設は実に広範に及んでいる。最近では羽田空港国際線地区整備事業が有名だろう。
PFIの事業の流れとしては、公共施設等の管理者である国・公共団体による、実施方針の策定から始まり、特定事業の選定・民間事業者の選定が行われる。評価委員会等が事業者の評価に当たる。ポイントはPFIを行うことによりVFM(Value for Money)が生じるかどうかである。これは金銭的に意味がある事業かどうかという意味だ。同一水準のサービスをより安く、同一価格でより上質のサービスを行うことがPFI事業の目的である以上、VFMの評価が欠かせないのだ。民間事業者は、建設会社・維持管理会社・運営会社等複数の企業が集まってSPCを設立する。SPCは金融機関から融資を受けて事業推進の中心的役割を果たす。わが国ではPFIも地方自治法や公物管理法の対象になるため、民間事業者は法律上の管理者とはなれないとされる。しかし、判例により、国家賠償責任は国・自治体が負うとされている。
今後の課題としては、民間事業者のノウハウや創意工夫を十分に発揮できるスキームとして運用していくことが求められる。発注者が技術的に細かいことまで決定するのではなく「性能発注」を行い、民間事業者の自由度を高めている。対象事業は広範であるが、船舶・人工衛星・公的賃貸住宅なども今後は含めていく必要があるだろう。法施行から10年が経過したが、国・自治体による公共施設整備において、どのような事業がPFIに適しているのかの選定や、事業者選別の公正なプロセスの確立、適正なリスク分担により、真に国民のための効率的なサービス運営がなされることが期待されている。
ジュリスト2010年11月15日号「PFI法のさらなる活性化に向けて」小幡純子

2010年11月19日 (金)

住居侵入罪と戦争の後方支援

法学教室 2010年 11月号 [雑誌]Book法学教室 2010年 11月号 [雑誌]

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大審院の判例は、住居侵入罪に関しては、旧住居権説の立場に立ち、家制度に基づき、戸主が住居権を有すると解した。そして、戸主が出征中に姦通目的で家に入った場合は、妻の同意があっても、住居権者である夫の推定的同意に反する以上、住居侵入罪が成立すると解していた。戦中の住居侵入罪の適用は、刑法の解釈・運用が国の政策に大きく影響を受けることをよく示している。太平洋戦争の時代に住居侵入罪の認知件数は激増し、戦争終結と同時に激減している。その原因について犯罪白書は「戦時において銃後の婦女子を守ろうとする捜査当局の厳重な捜査方針の下で、当時、刑法には人の妻たる者の姦通行為につき、その妻と相姦者とを処罰する旨の規定は存したが、夫の告訴を要する親告罪であり、これで処罰しようにも出征中の夫から告訴を得られず、実際上処罰することが困難であったため、相姦者が夫の住居権を犯したとして、住居侵入罪で処罰する方針がとられたのであり、これが、戦時住居侵入が増加した主因と考えられる」としている。戸主権と住居権を結びつける大審院判例は「銃後の守り」を支えていたのだ。これはある意味、捜査当局が戦争の後方支援をやっていたことを意味すると言っていい。
戦後になって、判例も様変わりし、住居侵入罪に関する理論も再構成されている。
法学教室2010年11月号「刑法各論の考え方・楽しみ方」佐伯仁志

2010年11月16日 (火)

パンチングボール(スピードバッグ)の打ち方

これがボクシング界の「秘密」である。基本的にスピードバッグは、叩いたら向こうに当たって、跳ね返ってきて、さらに向こうにあたる、そうしたらまた「叩くポイント」が生じる。音としては「タンタンタン」という三回の音を一発ごとに聞くことになる。これをスピード化する作業だ。レナードは「右で二発、左で二発」を繰り返していたが、タイソンは片腕を延々と繰り返していたのを映像で公開している。どんなに目に見えないほど高速化しても「三回の音」を間にはさんでパンチを打っている。
この映像を見てみて欲しい。
Youtube「スピードバッグの打ち方」



2010年11月14日 (日)

過払い金返還請求権の理屈

もう過去の話になりつつあるが、貸金残高14兆円を誇る消費者金融業界から、実に2・3兆円も「取り戻した」のが過払い金返還請求だった。弁護士・司法書士がどれほど潤ったかは想像に難くない。その背景にある法律に関して話したい。マニュアル形式にしてみました。あとは細かい判例の知識が必要ですが。
「過払い金返還請求の法律」
法律面
利息制限法」で民事上高金利を規制する。
元本が10万円未満で年20%
元本が10万円以上100万円未満では年18%
元本が100万円以上の場合は年15%を超える利息の契約は、その超過部分を無効とする。
出資取締法」で刑事上高金利を規制する。
一般的には年109.5%
業として行う場合は年29.2%を超える割合で契約をした貸主は「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科」する。
考察:この2つの法律を見てもらいたい。民事上違法(黒)でも、刑事上は違法でない(白)の領域 が存在する。これを「グレーゾーン金利」と呼ぶ。これを業界は「たまたま生じた隙間」であるとはとらえていない。多くの貸金業者は、利息制限法の存在にもかかわらず、刑罰を課されなければ 問題ないという認識のもと、グレーゾーン金利での営業を継続している。つまり、この利息での金銭の貸付のほうがむしろあたりまえなのだ。
判例
昭和39年最高裁大法廷判決:過払い利息の元本への充当を認める
昭和43年最高裁大法廷判決:元本に充当してなお過払い金が残る場合に返還を認めた。
ふたたび法律面
貸金業法」(昭和58年成立)
みなし弁済」(貸金業法43条)が認められ、②の判例法理を立法で否定。
「債務者が利息として任意に支払った」(債務者は利息の支払に充当されることを認識し、自己の自由な意思により支払えばよく、制限超過・契約無効を認識している必要はない:最高裁平成二年)
「みなし弁済」の要件として
「17条書面」・・契約締結時に交付義務のある書面
「18条書面」・・弁済受領時に交付義務のある書面の交付が求められる。
ふたたび判例
最近の一連の最高裁判決は、上に述べた昭和39・43年の両最高裁判決で確立された判例法理を覆した貸金業法43条の適用要件を厳格に解している。このときの一連の判例を正確に理解することが弁護士・司法書士に莫大な富をもたらした。
法学教室2006年6月号・尾島茂樹

2010年11月11日 (木)

アメリカ~6時から22時までは子供の時間

Jurist(ジュリスト)2010年 11/1号 [雑誌]BookJurist(ジュリスト)2010年 11/1号 [雑誌]

販売元:有斐閣
発売日:2010/10/25
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アメリカ連邦通信委員会(FCC)は、合衆国法典により、テレビやラジオなどの無線通信における「下品な」表現を規制する権限を持っている。特に、6時から22時の時間帯に下品な用語が用いられた場合は罰則を課してきた。2003年にゴールデングローブ賞の中継でU2のボノが
This is realy, really, fucking brilliant
と発言したことから、ほんの一瞬の表現ですらFCCに苦情が殺到した。ちなみに「Fuck」という言葉は婉曲的に「F言葉」と呼ばれている。その4ヵ月後に、スーパーボウルのハーフタイムショーでジャネット・ジャクソンが胸を露出したことからFCCは全体会議でゴールデングローブ賞規則(GG規則)という規制の基準を明らかにした。FCCが調査したところ、ABC、CBC、Foxなどで4つの「下品」な表現があるとしたが、これらのテレビ局の提訴を受けて、GG規則をいったん撤回し「市民の意見を聞く」とした。2002年のビルボードアワーズ賞を受けたシェールの発言や、2003年のリッチーの発言も問題となった。("fuck'em""shit""fucking"程度のものだった) FCCは、これらの発言はGG規則を変更した「R規則」に触れるとしたが、Foxは連邦高裁で基準変更の「合理的説明」を求めたのだ。
連邦最高裁法廷意見は、F言葉の一瞬の使用は、性的意味から派生して侮辱・攻撃を行う力を持っている。その言葉を発しただけでも卑猥な様子を表し、子供に対し有害な衝撃を与える。たとえ1回でも使用を認めるとその言葉が広範に使用されてしまうので、規制が必要であるというのは合理的である。とした。また、技術の進歩によって、たとえ生放送ですらそのような表現の削除の技術が存在することも明らかにしている。
アメリカの判例では、行政の解釈規則の変更にも1970年代から厳しくチェックする「ハードルック審査」という判例法理が出来上がっていた。しかし、連邦通信委員会は通常の行政機関ではなく、独立機関であったため、その裁量の幅が尊重され、緩やかな判断基準が採用された。政府側とFox側の見解は真っ向から対立する。政府側が「セサミストリートでビッグバードがF爆弾を投下するようなものだ」としたのに対し、Fox側は「F言葉は単なる強調の意味で用いられることもある。確かに低俗な言葉ではあるが、ある種のニュアンスを出す時に必要な場合がある」とした。なお、アメリカのテレビに「Vチップ」をつける方法をFox側が言及している。「性的、暴力的あるいは下品」な番組のレーティングをテレビに内蔵できるそうだ。
ジュリスト2010年11月1日号「行政機関の政策変更に関する司法統制~F言葉の放送を禁じることの合法性および合憲性」大林圭吾

2010年11月 9日 (火)

非正規雇用への雇用保険拡大

一般に、保険とは、同種類の偶発的な事故による危険にさらされている人々がこの危険の分散を図るために危険集団を構成するものである。そのような意味で、正規雇用の労働者と非正規雇用の労働者を「同じ危険集団」に入れる政策が今年の通常国会の雇用保険法改正だった。今までは「6ヶ月以上の雇用の見込み」を要求していた条文を、「週労働20時間以上、1ヶ月以上の雇用の見込み」に拡大したのだ。しかし、これでは、短期の就労を行い、何度も保険請求する人が出てくるかもしれない。そのために「被保険者である期間が6ヶ月、あるいは12ヶ月以上」という従来の要件は維持することで解決した。しかし、被保険者の範囲の拡大は明らかであり、新たに255万人が被保険者となり、雇用保険の受給資格がある人の数は23万人~42万人と推定されている。2010年度では576億円の支出超過、2011年以降には各年度1512億円の支出超過が見込まれている。これが民主党政権の雇用面での「セーフティーネット政策」だと言っていい。
なお、失業などによる雇用保険料率については、1.2%(事業主負担分0.6%、労働者負担分0.6%)とされた。本来、ヨーロッパでは景気のいい時に自由主義政党が政権をとり、不況時に社会民主党が政権をとるとされる。自由主義政党は資本主義経済の病理面であるインフレ退治を得意とし、社会民主党は雇用問題を得意とする。日本では後者に位置づけられる民主党であるが、二大政党制の運用としてはこの分野の勉強を得意とすることが民主党政治家に求められる。

産廃処理問題にみる「政(まつりごと)」

産廃処理業者という言葉にいいイメージを持つ国民は少ないのではないだろうか。基本的に「産業廃棄物」の定義は「有価値な廃棄物」であるとされ、リサイクルなどへの利用可能性などの価値のあるなしでただの「廃棄物」と区別される。では、なぜ産業廃棄物には悪いイメージがつきまとうのだろうか。基本的に「産廃処理業者が、処理に困って不法投棄する」現象が国民の不信感をかっているのだ。ただの「廃棄物」なら、業者を介入させずに行政が処理している。産廃処理は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)で規律されるが、この業界の構造的な問題の出発点は、「価値のあるゴミ」の排出事業者が、適正な処理コストを負担するインセンティブがないために、いい加減な業者でも安く処理してくれるのなら処理を委ねてしまう(安かろう悪かろう)ことにある。このことから、優良処理業者が市場で駆逐されてしまったのだ。このことは、産業廃棄物の適正な処理の確保を困難にし、産業廃棄物の不法投棄を誘発した。これが国民の不信感を招き、さらなる産廃処理施設の建設を困難にし、さらなる不法投棄を誘発するという悪循環を生み出した。
この「構造」を認識した政府は、排出事業者が適正な処理コストを負担するとともに、優良処理業者を選択し、市場において悪質業者を排除することによって、適正な処理を確保し、産業廃棄物に対する国民の信頼の下に健全な循環型社会の構築を目指した。この「産業廃棄物処理の構造改革」も、排出事業者による実地確認の義務付けや、管理票の利用、業者への維持管理積立金の義務付け、など様々な手段をうまく利用して行われたのだ。
問題の認識から、構造分析、解決策の企画立案に関する行政の対応はきわめて優れており、産業廃棄物の不法投棄の量は確実に減っているのだ。報道される機会も知らぬ間に減っている。いまだに産廃処理施設の国民のイメージは悪いものの、これが政をつかさどるということなのかもしれない。

2010年11月 6日 (土)

東大ではないけど統治が趣味

日本はすでに動き出している。2010年6月に菅内閣が「地域主権戦略大綱」を閣議決定した。地域主権改革は「依存と分配」の仕組みから「自立と創造」の仕組みへの転換だ。具体的に取り組む課題としては、義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大、基礎自治体への権限委譲、国の出先機関の原則廃止、ひも付き補助金の一括交付金化、地方税財源の充実確保、直轄事業の廃止、地方政府基本法の制定(地方自治法の見直し)、自治体間連携・道州制、緑の分権改革などを挙げている。
日本国は、憲法の明文の変化のないまま、統治構造の根本的変化をにらんでいる。「統治が趣味」の頭のいい人間に「地方自治体」という活躍の場を与える方針だ。平成の市町村合併も、基礎的自治体の体力強化が目的だった。基礎的自治体の体力強化はすなわち「人員削減」に耐えうる自治体を作ることだ。
現在、政策法務という言葉が流行っているのだが、法律の知識を背景にして、市民との交流の中から問題を発見し、それを解決することが地方自治体職員に求められている。
補足)ジュリストでは11月15日号で自治体政策法務の連載が14回をもって完結した。その際に阿部泰隆教授が論考を寄せている。現在の地方自治体は決して地域主権などと夢のようなことを語っているような現状ではなく、旧態依然とした親方日の丸体質が残っていることを指摘している。行政訴訟になっても裁判所が行政の味方をするのが当然とされ、理屈をひねり出せば通ってしまう現状がある。行政訴訟での原告勝訴率は数パーセントだとも言われる。また、「義務付け・枠付けの見直し」は法律の規律密度を下げて条例に任せることを意味するが、おそらく各自治体は今までの法律をコピーアンドペーストするだけの対応になるとされる。あくまでもこの国は中央政府が中心の国家であるという意識が根強いという点は忘れてはならないと思われる。
ジュリスト2010年10月15日号「自治体政策法務と人材育成」小池治

2010年11月 5日 (金)

アンディが使った教育積み立て制度~ショーシャンクの空に

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アメリカには、教育資金の積み立てへのインセンティブを付与するタイプの租税優遇制度がある。代表例として「教育IRA」(内国歳入法530条)がある。これは、子供が18歳に達するまで年上限2000ドル(限度額は所得上昇とともに逓減)まで教育IRA(信託口座の一種)に拠出することができ、当該口座における「運用益」を非課税とするものである。課税後の所得を口座に拠出して、それを非課税で運用し、将来の教育費支払に必要な際に引き下して利用できる制度である。各年度の引き出し額がその年の適格教育支出の額まで非課税とされ、越えた部分は年金課税の方式に従い、受益者(子供)の総所得に引き出し額の一定割合を算入することになる。超過累進課税の下では、子供の税率が親など委託者(資金拠出者)よりも低いことが多いため、この部分でも一定の恩恵が存在している。なお、教育目的以外の目的外支出に利用された場合には、税額を10%上乗せするペナルティが存在する。教育を通じた人的資産の形成のためにさまざまな政策手法があるが、日本では現金主義的な手法がとられているのは周知だろう(高校授業料無償化・子ども手当てなど)。しかし、アメリカには租税優遇措置を利用したインセンティブ付与の政策がいろいろあるのだ。
おそらく、「ショーシャンクの空に」のアンディ・デュフレーンは、この仕組みを熟知していたものと思われる。彼を刑務所の劣悪な環境から救ったのも「国家の制度」の理解だった。
ジュリスト2010年10月15日号「租税支出と教育支援」神山弘行

南極探検隊からお土産をもらったおばさん

南極条約体制は、国際公共価値を強く指向した条約制度だ。それを踏まえて、各国の国家的利益や、私的利益との調整を行っている。私は、上流階級のおばさんが「南極からお土産をもらった」と言っていたのを聞いたことがあるが、南極では高級魚メロが有名だ。それ以外にも、旅行会社がツアーを組んだりしている。これらは私的利益に解消される。国際公共価値は、領土権の非排他性と、当該地域への自由アクセス、平和、科学、環境といった価値を意味する。南極大陸に対しては7カ国が領土権を主張し(クレイマント)、日本のように領土権を主張しないノンクレイマントとうまく共存している。南極条約体制をうまく機能させているのが「紛争回避の原理」と「実質的コンセンサスの原理」だとされる。領土紛争を封印し、ノンクレイマントが淡々と自らの立場を主張しつつも、決定的な対立を避ける外交努力を行っている。あるいは、妥協点が得られるまで交渉し、「公式の異議」がなくなった時に「合意が得られた」とする仕組みをとっている。これらを運用するのが南極条約協議国会議(ATCM)である。南極観光では、定員500名以上の船からの上陸はできないし、上陸は100名以下にしなければならず、その際に観光ガイドと客の比率が1:20以下になってはならないとされる。
ジュリスト2010年10月15日号「南極条約体制の基盤と展開」柴田明穂

国際刑事裁判所をあざ笑うアフリカの人

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1998年のローマ規定によって設立された国際刑事裁判所(ICC)が、現在、機能不全の問題を抱えている。スーダンのダルフール地方の紛争に関して、国連安保理で2005年にこの紛争がICCに付託され、米国・中国・ロシアはICCに加盟していないものの、棄権するかあるいは拒否権を行使しなかったため、ICCはスーダンに、容疑者とされた閣僚や軍要人の引渡しを要求するも、スーダンは拒否した。スーダンはICCには加盟していない。アフリカでは、アフリカ連合が独自にダルフールに関するハイレベルパネルを設置した。アフリカ連合は政治的解決を目指したため、ICCとの緊張感を高めた。その経緯の中で、アル・バシール大統領の嫌疑・行動が問題となったのだ。ICCの管轄権行使は、締約国の付託か、犯罪地国か被害者国籍国の受諾があれば検察官が捜査権を行使できるが、国連安保理の付託の場合は、それだけで管轄権が行使できるために当然、当事国であるスーダンの反発も想定できるのだ。アル・バシールはアフリカ諸国を訪問し、どの国も逮捕権を行使しようとしないのだ。安保理では、中国とロシアがスーダンに対して友好的であるために、強硬な措置がとれず、アフリカ連合諸国がハイレベルパネルによる地域的解決を求めているためにこのようなことが起きている。これが、現在、国際刑事裁判所(ICC)をめぐる問題である。
そもそも、オランダのICCが、世界で何が起きているのかを把握することはきわめて困難であり、まずは一義的にはその国の処罰に委ねる方が、証拠収集の面からも好ましい。あくまでもICCは補完的なものだ。しかし、日本の刑事訴訟法もローマ規定の影響を受けており、殺人罪などの公訴時効を撤廃したことはローマ規定に一致するものだった。東京裁判・ニュルンベルク裁判から始まり、旧ユーゴスラビアおよびルワンダの国際刑事法廷を経て精緻化されたものが今のICCであると位置づけられる。全体的な発展は慣習国際刑事法の側面から把握すべきものなのだ。慣習国際刑事法は罪刑法定主義の問題があり、条約や各国国内法にはそのような問題はない。しかし、いまだ条約が成立していない領域での慣習の生成というものも無視できないのだ。東京裁判というのも結局そのような慣習の生成の一環と位置づけられるのかも知れない。
ジュリスト2010年10月15日号「ICC(国際刑事条約体制)」高山佳奈子

2010年11月 4日 (木)

二酸化炭素(CO2)を海に沈める技術とは何か?

CO2削減の方法に、鉄の海洋散布という方法がある。植物プランクトンの繁殖や、藻類の発生を助長し、それらがCO2を吸収して死滅し、海洋深く沈むそうだ。しかし、海洋の酸性化、バクテリアの発生、温室効果を持つメタンの発生、その他の生態系への影響が明らかではなく、「海洋科学調査」として許容できるのか、「海洋投棄とどう異なるのか」など国際条約レジームとの調整が必要になる。この方法でCO2を減らして、クレジットを国に売りつけようというビジネスの可能性があるのだ。「二酸化炭素を海に取り込んでしまえ」という議論は「鉄の散布」のことだったのだ。南極海などの鉄分の少ない海域で有効な実験であるが、実験のリスクは未知数だ。しかし、国際条約がいつまでもこの技術に否定的であると、この技術の可能性は完全に閉ざされることになる。そのため、ロンドン条約レジームをメインに議論が進められいてる。
ジュリスト2010年10月15日号「ロンドン(ダンピング)条約と海洋肥沃化実験」奥脇直也

2010年11月 1日 (月)

ゴルゴ13「種子探索人」と生物多様性条約

リードコミック101巻の「種子探索人」という作品がある。サブタイトルが「プラントハンター」だったと思う。
中国の山奥に新種の植物を探索に行く人々が、次々に「黒い悪魔」に襲われて死亡するのだ。この「黒い悪魔」の退治にゴルゴが乗り出す。実は、ガイドが途中で休憩と称して幻覚剤を探索人に飲ませ、カラスを呼ぶ笛をぐるぐると回すと、カラスがたくさん集まってきて、幻覚剤を飲んだ探索人は「黒い悪魔」に襲われたと言って命を落としていたのだ。
この作品は、生物多様性条約と深く関わっている。生物多様性条約の目的は、①生物の多様性の保全、②持続可能な利用、③利益の公正な分配が挙げられる。
たとえば、途上国ほど生物は多様であるが、中には珍しい薬草を先進国が特許をとり利益を独占するケースがある。この場合の途上国の不満は、貧困がともなう場合はうまく納得させることができない。そのための利益の公正かつ衡平な分配が求められるのだ。
かつては国連食糧農業機関(FAO)の「植物遺伝資源に関する国際的申し合わせ」(1983年)というのがあったが、途上国の不満は大きく、生物多様性条約は15条で、各国の天然資源への主権的権利を認め、遺伝資源へのアクセスについて定める権限が各国政府に属することとした。「中国の山奥の秘薬」は中国政府に権利があるとされたのだ。
WTOの知的財産はTRIPsが規律しているが、先進国が持っている知的財産権と生物多様性条約は「関係ない」という見解もあったが、何らかの調整が求められることにはもはや異論はない。遺伝子資源の原産国・出所をしっかり表示したり、そこからどのような発明を行ったのかを明らかにすべきではないか、あるいは、特許に事前同意が必要か、利益配分についての話し合いを行うべきではないのか、などが問題となった。WTOドーハ開発アジェンダで問題になったのだ。薬草の効能などはその地域では広く知られていることもあり、その地域の風習を、世界レベルの知的財産コミュニティーが吸収してしまっていいのかも問題になる。知的財産法もひとつの「文化」に過ぎないと考えて、先住民族を尊重するという点では大方の合意が得られている。
なお、あえて種子を例に挙げたが、先住民族は、人的遺伝的資源・種子・薬品・動植物の特質・口頭伝承・文学・意匠・スポーツおよび伝統的試合・芸術・芸能などへの権利をもつとされている。
参考:ジュリスト2010年10月15日号「生物多様性条約と知的財産制度」鈴木将文
注)なお、ゴルゴ13では中国が事例として出されたが、メガ多様性同士国家グループというのがあり、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、インド、インドネシア、ケニア、メキシコ、ペルー、南アフリカ、ベネズエラ、マレーシア、ボリビア、フィリピンの15か国で構成されている。これらの国が2002年に「カンクン宣言」を出し、生物多様性から生じる利益の適正な分配を国際社会に求める宣言を出している。

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